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新紙幣の「0」、カールおじさんのヒゲを想起させ……



財務省が(2019年)4月9日に発表した新しい紙幣について、世のなかが騒ついているようです。とりわけ、額面を示したアラビア数字の書体について「ダサい」などと不評が上がっているようです。いかがでしょうか。

多くの人が不評の声を上げているということは、かなりの人がこの数字の意匠に対し、直感的に違和感を覚えているにちがいありません。新紙幣の数字のなにが違和感を抱かせるのでしょうか。

「10000」「5000」「1000」に使われる「0」の字が、「カールおじさん」のヒゲのように輪っか状になっています。いま出まわっている紙幣は、輪っかの内側がさほどふくらんでおらず、“締まり”があります。

ということで、まず、“締まり”のない「0」を紙幣で見ることにより、人びとはよからぬ違和感を抱くのではないでしょうか。

さらに、アラビア数字の大きさにも、面くらう人は多いことでしょう。とくに、3種類の紙幣の裏側の右上に印刷されている「10000」「5000」「1000」の数字の大きさは、ほかの文字にくらべて突出しています。

文字の意匠では「ジャンプ率」が、人びとの印象を変えるといいます。ジャンプ率とは、その意匠のなかでのもっとも大きい文字と、もっとも小さい文字の比率のこと。ジャンプ率が高いと大衆的、また動的な印象をあたえ、逆にジャンプ率が低いと知的、また信頼といった印象をあたえます。

新紙幣のとくに裏側のジャンプ率はとても高いものとなっているわけです。「大衆的」という印象を超えて、右上のアラビア数字にどこか間抜けさを感じる人もいるのかもしれません。地平線近くに見える月は大きく見えてびっくりしますが、それと似た感覚を抱く人もいるのではないでしょうか。

財務省は、額面数字の大型化は「ユニバーサルデザイン」を考えてのことだと述べています。

もうひとつあげると、アラビア数字があまり立体的に意匠されていないという点も、負の印象を抱かせるのかもしれません。いま出まわっている紙幣では、多くの数字が右下に影がついたように意匠され、立体的になっています。

いっぽう、新紙幣では、数字によっては縁に濃淡をつけるなどはされているものの、影をつけて立体的に見せることはしていません。これが、のっぺりとした印象を抱かせ、不評の一因となっているのではないでしょうか。

紙幣で大切なのは「いかに偽装を防ぐか」といわれます。人びとの不評を買うような意匠にも、なにかしらの理由があるのかもしれません。あるいは、紙幣を使う気を失せさせてキャッシュレス社会を促すといったねらいまであるのでしょうか。

新しい紙幣は、2024年度上期に発行される予定。財務省は「形式等の細部については、今後、検討の上、決定予定」としています。アラビア数字の意匠については、「検討」の対象となっているのでしょうか。

参考資料
財務省 2019年4月9日発表「新しい日本銀行券及び五百円貨幣を発行します」
https://www.mof.go.jp/currency/bill/20190409.html
日本銀行「銀行券/国庫・国債」
https://www.boj.or.jp/note_tfjgs/note/valid/issue.htm/

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