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実際のモデルが得られ、描かれかたも変わっていくことに
日本をふくむ世界各国からなる天文研究チームが(2019年)4月10日(水)、巨大ブラックホールとその影の存在を初めて画像で直接証明することに成功したと発表しました。

ブラックホールは、物質も光でさえも外へ出られないほどの強い重力をもつ天体です。星が超新星爆発を起こして死ぬとき、残った星の中心がみずからの重力で潰れてぎゅうぎゅうになり、とても高い密度をもつようになります。密度が高いものは重力が高くなるので、これで高い重力をもつブラックホールが生まれるわけです。残った星の中心の質量が太陽の1.4倍以上あるとブラックホールになるとされます。

今回、研究チームが発表したブラックホールの像にある中央の黒い部分は「ブラックホールの影」とよばれるもの。ブラックホールちかくの光はブラックホールに閉じこめられますが、より遠くにある光もブラックホールの重力の影響を受けて進む方向を変えられてしまいます。そうしたことで、ブラックホールのまわりでは光がない影ができるわけです。ですので、実際のブラックホールの大きさは、この影より2.5倍小さいものとなるそうです。

天文学などの物理学、さらには科学全般では、「理論が立てられてから、のちに実際の現象が確かめられる」ということがよくあります。物理学者のアルバート・アインシュタインが理論のなかでブラックホールの存在を予言してからというもの、人は「ブラックホールはある」と考えてきました。しかし、その後も人は「ブラックホールを像として見た」ことなく過ごしてきました。

その姿をついに見ることになったのですから、大きなできごとというほかありません。この成果でノーベル賞が贈られるのは確実でしょう。国際研究事業であるため、だれに贈られるかはむずかしそうですが。


2019年3月までの「ブラックホール」グーグル画像検索結果

これまでブラックホールの像を捉えることはできなかったため、人はブラックホールを想像図として描くしかありませんでした。画像は、2019年3月までに描かれていたブラックホールの姿です。渦を巻く銀河の中心にあり、光も閉ざされるといった話をもとに、「渦の中央にまっ黒な円」という描かれかたが多くあります。

これからも、人はブラックホールを描いた図を描いていくことでしょう。けれども、そのモデルは、もはや理論でなく、実際の像となるわけです。これにより、ブラックホールを描く図は、どのように変わっていくか。その移りかわりを追っていくのも、天文学の大きなできごとが起きてからの興となります。

参考資料
国立天文台 2019年4月10日発表「史上初、ブラックホールの撮影に成功 地球サイズの電波望遠鏡で、楕円銀河M87に潜む巨大ブラックホールに迫る」
https://www.nao.ac.jp/news/science/2019/20190410-eht.html
知恵蔵「ブラックホール」
https://kotobank.jp/word/ブラックホール-8300

 
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