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「みずから成長する」から「子孫を残す」へ

写真作者:Harry Rose

ヒトをふくむ動物にもいえることですが、植物は意識せずとも「みずからを成長させる」ことと「子孫を残すこと」というふたつの大きな課題を抱えています。このふたつの課題のために使える時間や栄養素などの資源にはかぎりがあります。そこで、どこかしらの機に、みずからを成長させることから、子孫を残すことに切りかえることになります。

植物の成長を追っていくと、花茎の節と節のあいだが急に伸びていく、つまり成長していくことがあります。これは「薹立(とうだ)ち」あるいは「抽台・抽苔・抽薹(ちゅうだい)」という現象として知られています。

たとえば、冬を越して生きるロゼットなどの草では、冬のあいだは地面ちかくに這うように広がる葉だけで過ごしますが、春になり温度や日の長さなどが変わっていくと、薹立ちが生じて花茎がぐんぐん伸びていきます。

こうした植物の薹立ちは、「子孫を残すこと」のための成長が始まった徴しであると考えられています。

植物の薹立ちでは「しばらくのあいだ低温にさらされること」が必要な条件のひとつとされています。これにより、花芽が形づくられ、薹立ちをしていきます。ただし、種子が発芽するぐらいの早い段階から「しばらくのあいだ低温に」という条件が関係しはじめる植物と、ある程度の大きさに成長してから「しばらくのあいだ低温に」という条件が関係しはじめる植物があります。

植物たちからすれば人間の都合を汲む余地などありますまい。しかし、作物としての植物の薹立ちは、人間たちにとっては不都合なもの。「みずからを成長させる」段階では、作物が太ったり、甘みを増やしたりするため栽培には好ましいこと。しかし、「子孫を残すこと」のための成長が始まると、もはや太ったり甘みを増やしたりといったことはあまりしなくなります。むしろ葉っぱを固くさせたりして、野菜の品質としてはよからぬほうへ向かっていく植物も。

こうしたことから、野菜や根菜などについては「薹立ちするまえに収穫すべし」という原則がいわれています。

参考資料
タキイ種苗 農業・園芸用語集「抽苔」
http://www.takii.co.jp/glossary/chi.html#10
世界大百科事典 第2版「抽だい(抽薹)」
https://kotobank.jp/word/抽だい%28抽薹%29-1185412
やまむファーム「野菜のとう立ち(薹立ち・抽苔)について」
https://ymmfarm.com/cultivation/basis/bolting
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