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「骨髄で血液がつくられる」に謎あり

写真作者:Duc Ly

骨の中心にある骨髄は、血液をつくります。けれども、ヒトなどの個体は、発生してまもないころから骨髄で血液をつくっているわけではありません。

まずは、卵黄嚢とよばれる、卵黄を包んでいるところで、その後は肝臓や脾臓という臓器が血液をつくる担い手となります。発生から4か月ほどすると、血液がつくられる場が移り、やがて骨髄が血液をつくるようになります。

とはいえ「血液がつくられる場所といえば骨髄」ということでだいたい合っています。感覚的に骨と血液が結びつかないという人もいるのではないでしょうか。なぜ、血液は骨髄でつくられるのでしょう。

骨髄での造血をめぐっては、生きものの陸上への進出が深くかかわっているという話がいわれているようです。

海などの水中で暮らしていた生きものは、水の浮力を受けるため、重力をさほど受けずにいました。しかし、陸に上がると水の浮力を受けないため、水中にいるときより6倍の重力を受けるようになりました。すると、血液が体の下のほうに落ちてしまうため、それに対応するため生きものの血圧が高まり、これを引き金に軟骨が硬い骨になり、そこに骨髄腔がつくられ、血液をつくる作用が肝臓などから骨髄に移るというのです。

また、水中より陸上の酸素濃度のほうが高いことも、骨髄腔が生じる要因になるといいます。

しかし、これらの説明では、骨髄腔が生じたとしても、なぜそこに血液をつくるしくみが移るのかまではわかりません。生きものの進化の過程は、個体の発生以降の過程とにているから、ということだけでは説明がつきづらいものです。

ひとついえるのは、骨髄には、血液がつくられるのに適した微小環境があるということです。血液がつくられるのにより適した場所があれば、そこで血液をつくるのが理にかなっているという考え方ができます。つまり、この考え方からすると、「骨髄で血液はつくられるのは、骨髄がもっともふさわしい場所だから」ということになります。この話もまだ推測の域を超えないようではありますが。

参考資料
ウィキペディア「造血幹細胞」
https://ja.wikipedia.org/wiki/造血幹細胞
西原克成『追いつめられた進化論』
https://www.amazon.co.jp/dp/4531063554
西原克成、田中順三「海から陸へ 脊椎動物の上陸劇の重力対応」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sobim/21/4/21_KJ00000972302/_pdf
生物史から、自然の摂理を読み解く 2009年8月7日付「上陸に伴って造血機関が骨髄へ移ったのはなんでだろう」
http://www.seibutsushi.net/blog/2009/08/000850.html
医療科学 Q and A 2009年5月6日付「造血は、なぜ、骨髄で?」
https://h-ninomiya.at.webry.info/200905/article_1.html
科学技術のアネクドート 2019年3月7日付「“小さな環境”が細胞の分化をつかさどる――血液多様性を見る(3)」
http://sci-tech.jugem.jp/?day=20190307
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