科学技術のアネクドート

<< 花はかわいく、体は毒をもち | main | プロ野球の「球・グラウンド比」はおよそ3万733倍 >>
実質主義に立って「→」も使うべし


雑誌やインターネット記事は、基本的に、文字や数字、また括弧、疑問符、感嘆符などの約物で埋めつくされます。そうしたなかで、たまに「→↓←↑」つまり矢印が使われていることがあります。

矢印は、矢のかたちをしていることから「矢印の尻から先へ進んでいく」ということを読者に意識させます。

たとえば、東京駅から横浜駅までの鉄道の駅順を伝える記事では「東海道線は、東京→新橋→品川→川崎→横浜の順に停車していく」などと記されることがあります。

しかし、このような何段階かを追っていくための矢印を記事で使うことについては、「記事内で使うべきか」といった議論は起きうるものです。

たとえば、共同通信社が発行している『記者ハンドブック』には、「―」「…」「=」などの符号の使い方は記されているものの、矢印の使い方を示した項目は見あたりません。すくなくとも、「―」「…」「=」などの符号よりは、使うことが意識されていないようです。

矢印を使うことにためらいのある記者や編集者は、「記事というものは、文字、数字、そしてかぎられた約物でなりたつものだ。矢印はそうした記事の構成要素にはふくまれていない。よって、使うべきではない」と考えているかもしれません。「矢印は使われていないから使わない」あるいは「矢印を使っていないから使わない」という考えです。

いっぽう、矢印を使うことに積極的な記者は編集者は、「記事というものは、読者に伝わることがめざされるものだ。その目的のために矢印がより効果的になる場合がある。その場合は、使うべきだ」と考えているかもしれません。

たとえば、上にある東京から横浜までの駅順を矢印なしに記すと、「東海道線は、東京、新橋、品川、川崎、横浜の順に停車していく」となります。矢印があれば「東京」と「新橋」の関係は「前の駅と次の駅なのだ」と直感できますが、矢印がないと「東京」と「新橋」の関係はまだ見えてきません。「の順に」というところまでたどりついて「前の駅と次の駅なのだ」とわかることになります。矢印があるほうが、より読者に伝わるわけです。

これらのことから、矢印を使うかどうかは、いわば形式主義をとるか実質主義をとるかのちがいといえるでしょう。

読者に伝わることを考えたら、実質主義、つまり矢印を使うほうが優っていそうではあります。しかし、かならずしも矢印を使うほうが優るともいいきれません。

たとえば、記事のなかに矢印が大量に使われ、読者が「なんだこの記事は、矢印ばかり使って」と嫌気をさして記事を避けてしまえば、矢印を使うことは失敗となります。

そこまでいかなくても、矢印が使われる記事に慣れていない読者が、読んでいる記事で矢印を目に入れたら多少の違和感を覚えるかもしれません。その違和感は、記事が伝わるためには邪魔なものとなります。

記者や編集者は、「読者に効果的に記事を伝える手段として、矢印も使えばよい」という考えを基本にしつつ、「この場面で矢印を使うことは逆効果にならないか」といった慎重な姿勢も保つ、ぐらいの感覚で矢印に向きあうのがよいのではないでしょうか。

参考資料
共同通信社『記者ハンドブック 第13版』
https://www.amazon.co.jp/dp/4764106876
| - | 23:49 | comments(0) | trackbacks(0)
コメント
コメントする









この記事のトラックバックURL
http://sci-tech.jugem.jp/trackback/4918
トラックバック
CALENDAR
S M T W T F S
   1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031 
<< May 2019 >>
SPONSORED LINKS
RECOMMEND
フェルマーの最終定理―ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで
フェルマーの最終定理―ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで (JUGEMレビュー »)
サイモン シン, Simon Singh, 青木 薫
数学の大難問「フェルマーの最終定理」が世に出されてから解決にいたるまでの350年。数々の数学者の激闘を追ったノンフィクション。
SELECTED ENTRIES
ARCHIVES
RECENT COMMENT
RECENT TRACKBACK
amazon.co.jp
Billboard by Google
モバイル
qrcode
PROFILE