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「こだわり」と引けば、否定や傲慢さばかり



写真作者:Guilhem Vellut

「こだわり」くらい、いま使われている意味あいと、もともとの意味あいが、反対になっている表現はそうないのではないでしょうか。いまは、肯定的で価値あるおこないと捉えられることがほとんどです。もともとは、否定的でむだなおこないと捉えられていました。

たとえば、いまのニュースで「こだわり」がどう使われているか。インターネットで「“こだわり”ニュース検索」をしてみます。すると上位から順につぎのような見出しが。

 「木村拓哉、役者としての譲れないこだわり」
 「『きれいな川』へのこだわり、千葉県いすみ市の夷隅川そばで半自給自足生活を追求」
 「ファミマ『イタリア栗のモンブラン』こだわり感じるリッチ仕上げ…。」
 「『びっくりドンキー』のアレフ、脇役もこだわり」
 「本塁打王にこだわり 西武・山川が自主トレ」

いろいろな「こだわり」があるものですが、どれも「とりわけ力を入れている」「手間暇をかけている」「誇りをもっている」といったような意味が感じられるのではないでしょうか。

では、と、国語辞典を見てみると、四つ意味が並びますが、いずれもなかなか否定的だったり、傲慢な態度を表していたりします。『スーパー大辞林』で、動詞の「こだわる」を引くと……。

  心が何かにとらわれて、自由に考えることができなくなる。気にしなくてもいいようなことを気にする。拘泥する。
  普通は軽視されがちなことにまで好みを主張する。
  物事がとどこおる。障る。
  他人からの働きかけをこばむ。なんくせをつける。

もともとは、自由に考えらなくなったり、好みを主張したり、とどこおったり、なんくせをつけたりすることが「こだわり」であるわけです。前向きな感のある意味は、ほぼ見られません。

ただし、辞書編纂者も「こだわり」の意味あいが変わってきていることに気づいているのでしょう、国語辞典によっては、前向きなおこないを想起させる意味も載せています。

たとえば、『デジタル大辞泉』の「こだわり」の2番目の意味には「物事に妥協せず、とことん追求する」とあります。これが、いまニュース記者をふくむ多くの人が使っている「こだわり」の意味あいではないでしょうか。

参考資料
スーパー大辞林「こだわる」
デジタル大辞泉「こだわる」
https://dictionary.goo.ne.jp/jn/79693/meaning/m0u/こだわる/

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