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2018年の科学の画期的成果、生命科学のことば多く並ぶ


米国科学振興協会(AAAS:American Association for the Advancement of Science)は、発行する雑誌『サイエンス』で、「2018年の科学における画期的成果」(2018 Breakthrough of the Year)を12月20日に発表しました。

きのうこのブログで紹介した第1位「細胞ひとつずつの発達」のほかに、「次点」として九つの成果が選ばれました。

「遠く離れた銀河からの使い」。ほとんど質量がなく、検出するのがきわめてむずかしい宇宙の物質「ニュートリノ」を検出することができました。米国航空宇宙局の「フェルミガンマ線宇宙望遠鏡」が、ブレーザーとよばれる天体からの光を捉えたもの。このブレーザーは、巨大楕円銀河の中心にあるブラックホールをエネルギー源として輝く星です。

「分子の構造、単純なる」。小さな有機化合物の分子構造を数分で決めることのできる方法を、ふたつの研究グループがほぼ同時に開発しました。昔からあった、電子線を使って結晶のつくりを二次元で見る方法では、たまたまその画像が積みかさなって三次元の結晶の像をつくることがありました。このしくみを応用して、きちんと三次元で結晶のつくりを見る方法が開発されました。

「氷河時代の衝撃」。グリーンランドの北西部に、かつて31キロメートルの大きさの隕石が衝突していたことがわかりました。「ハイアワサクレーター」とよばれています。岩を蒸気化し、北極じゅうに衝撃波を送るほどのもの。

「ミートゥーがちがいをつくる」。科学の分野におけるセクシャルハラスメントは、これまで報じられず、多くは無視されてきましたが、2018年になり変化の兆しが見られたといいます。米国科学工学医学アカデミーが、これらの分野における女性へのセクシャルハラスメントについての報告書を出したことによるもの。分野によっては、5割以上の女性教職員、また2割から5割の女子学生がセクシャルハラスメントに遭ったことがあるとしています。

「古代人の“ハイブリッド”」。5万年以上前に生きていたとされる女性の骨のかけらを調べたところ、母がネアンデルタール人で、父がデニソワ人であることがわかりました。ネアンデルタール人は40万年前にあらわれ、2万数千年前に絶滅したとされるヒト属。いっぽう、デニソワ人は約4万1000年前に生きていたとされるヒト属。このふたつの属のあいだに交わりがあったことは研究者を驚かせています。

「犯罪遺伝子学が一人前に」。「黄金州の殺人鬼」とよばれ、1970年代から80年代にかけて強姦や殺人をくりかえしていたとされる殺人犯が逮捕されました。ある犯罪場面と民間のデオキシリボ核酸(DNA:DeoxyriboNucleic Acid)データベースとを照合させることで犯人を特定することができたとのこと。

「遺伝子抑制薬が認められる」。リボ核酸(RNA:RiboNucleic Acid)干渉とよばれる遺伝子抑制のしくみをもとにした医薬品が承認されました。リボ核酸干渉とは、2本鎖のリボ核酸によって遺伝子が発現するのを抑えること。2008年にはこの現象の発見者にノーベル生理学・医学賞が贈られています。このリボ核酸干渉を利用して、心臓や神経を傷つける遺伝性トランスサイレチンアミロイドーシスという病気の治療薬が開発されました。

「太古世界に開かれた細胞の窓」。研究者たちは5億年以上前に生きていた生きものの細胞の痕跡を見つけました。「ディッキンソニア」とよばれるもので、エディアカラとよばれる化石における脂肪細胞から特定されたもの。地球最古の生きものではないかともされます。数十年前から見つかっていましたが、動物に入ることがわかりました。

「いかに細胞たちはその中身をまとめるか」。細胞におけるいくつもの要素が寄りあつまり、正しい時間に役割を果たせるのはどうしてか。「液滴」とよばれる現象が、その答えであるとされてきたものの、これまで観察することはできませんでした。その現象を可視化することに成功したのです。

例年もそうですが、『サイエンス』が選ぶ画期的成果については、生命科学と人類学の分野におけるものが多くなる向きがあります。2018年も、「分子」「細胞」「遺伝子」「リボ核酸」といったことばが多く見られました。

『サイエンス』2018年の科学における画期的成果を伝える記事はこちらです(英文)。
https://vis.sciencemag.org/breakthrough2018/finalists/#neutrinos

さて、一つの「第1位」と九つ「次点」のほか、「失敗」という括りで三つのできごとが記されています。こちらは、あす31日(月)に見てみます。
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