科学技術のアネクドート

<< 書評『医薬品業界で働く』 | main | 2018年の科学の画期的成果、生命科学のことば多く並ぶ >>
2018年の科学の画期的成果、第1位は「一細胞リボ核酸シーケンス法」の発展


米国科学振興協会(AAAS:American Association for the Advancement of Science)は(2018年)12月20日、「2018年の科学における画期的成果」(2018 Breakthrough of the Year)を同協会が発行する科学雑誌『サイエンス』などで発表しました。

『サイエンス』では毎年、第1位の成果を一つと、次点の成果を九つあげています。

第1位の成果は「細胞ひとつずつの発達」というもの。記事には「三つの技術により、科学者たちは胚の発達を、美しいまでの詳しさで追いかけている」とあります。

その技術は「一細胞リボ核酸シーケンス法」(single-cell RNA-seq)というもの。発現した遺伝物質の追跡、コンピュータの駆使、細胞の分類・決定、という三つの技術がくみあわさったものです。生きている遺伝子の動きをつぶさに捉えることで、1個ずつの細胞がなにをしているのかを掴みます。

実施例の動画を、同誌がつくった映像で見ることができます。4:30ごろから

この方法そのものは数年前に開発されていました。しかし2017年、ふたつの研究グループが、発生初期に細胞が分裂し、成長していくようすを、広く観察することに成功したことが、大きな転機になったといいます。たとえば、ミバエの胚を対象に8000個の細胞の遺伝子の動きを同時計測したり、線虫の幼生を対象に5万個の細胞の遺伝子の働きを記録したり、といった具合。

そして2018年、研究者たちは脊椎動物の胚についても、この観察法を使いました。対象にしたのは、ゼブラフィッシュというモデル動物の卵や、カエルの発生段階の個体。時間ごとに記録された像をつなげることで、遺伝子が活性化をくりかえすようすを観察し、生じる細胞のタイプ分けができたといいます。

この方法でヒトの胚の成長ぶりを直接的に見ることはまだできません。しかし、研究者たちはそれを実現することをめざしています。ある研究グループは、ヒトの腎臓細胞のタイプ分けに成功しており、そこでは、がん化しかけている細胞も観察できたといいます。

しかし、こうした高精度な像を得ることで、さらに謎も深まっていくようです。記事は「一細胞の革命は始まったばかりだ」と締めくくっています。

世の中では、一人ひとりの生活のしかたをつぶさに捉えてデータ化するような技術が発達しました。おなじように、1個ずつの細胞で起きていることをつぶさに捉えて像にする技術が発展してきたようです。

『サイエンス』2018年の科学における画期的成果、第1位の記事「細胞ひとつずつの成長」はこちらです(英文)。
https://vis.sciencemag.org/breakthrough2018/finalists/#cell-development

あす30日(日)は、次点に選ばれた九つの成果を紹介する予定です。
| - | 16:49 | comments(0) | trackbacks(0)
コメント
コメントする









この記事のトラックバックURL
http://sci-tech.jugem.jp/trackback/4828
トラックバック
CALENDAR
S M T W T F S
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30      
<< June 2019 >>
SPONSORED LINKS
RECOMMEND
フェルマーの最終定理―ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで
フェルマーの最終定理―ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで (JUGEMレビュー »)
サイモン シン, Simon Singh, 青木 薫
数学の大難問「フェルマーの最終定理」が世に出されてから解決にいたるまでの350年。数々の数学者の激闘を追ったノンフィクション。
SELECTED ENTRIES
ARCHIVES
RECENT COMMENT
RECENT TRACKBACK
amazon.co.jp
Billboard by Google
モバイル
qrcode
PROFILE