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教える人は「わかりません」と言いづらい

写真作者:British Province of Carmelites

ものごとを教える立場にある人には、「教わる人の知りたいことに答える」といった役目があります。そのため教える人は、教わる人びとの前で授業や講義、講演などをします。

こうした対面型の授業、講義、講演などでは、しばしば教わる人から質問が出ます。「先生がいまおっしゃったクローンは、どんな意味でお使いになったのですか」とか、「そのパラドックスが言われるようになったのはどうしてですか。だれが言いはじめたものでしょうか」とか。

教える立場にある人には、教える立場であることから、そうした質問に答えるべきといった前提があります。

とはいえ、教える立場にある人がなにもかも知っているわけではありません。ときには教わる人からの質問に対し、答えられる知識をもちあわせないこともあるでしょう。

けれども、教える立場にある人は、なかなか「それについてはわかりません」とは言いづらいものです。「わからないはずはない」という前提からくる無言の圧力があったり、「わからないというのは恥ずかしい」という羞恥心があったり、「できるだけ求めに応えたい」という責任感があったりするからでしょう。

教える立場の人が、あげられた質問についてほんとうにわからない場合、「わかりません」という以外に、いくつかの答えかたがあるようです。

まず、自分がもちあわせている関連しそうな知識に寄せて答える、という人がいます。たとえば「直接の答えになっているかわかりませんが、私が経験したことから言うと……」のような感じで、自分の経験談を話すといったようなものです。

これだと「質問に答える」という体は保たれます。しかし、質問した人の知りたいことに直接、答えているわけではないので、質問後もやもやします。

より正直な人は、「いまそれについて、私には答えがないけれど、宿題とさせていただき、あすのこの時間に答えさせていただきます」と応えるかもしれません。質問した人の知りたいことをきちんと答えようとする態度とはいえます。

ただし、「わからないはずはない」という前提がくつがえされるため、その場での教える人への信頼性はやや低まるかもしれません。教わる人が「この先生はあまりこの分野のことを知らないんじゃないか」と感じそうです。

どちらの場合も、教わる人の知りたいことにその場では答えられていません。この状況を避けるためには、教える人がどんな質問にも直接的に答えられるような広い知識や考えをもっておくことが理想的となります。

そこまでの広い知識や考えをもっていない場合は、どんな質問があがるかを想定して、あらかじめ答えとなる知識や考えを用意しておくといったことが、次善の策となります。
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