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読書の時間帯、実態と理論に隔たり

写真作者:Hernán Piñera

さまざまな団体が「読書の実態調査」をしています。このところでは、2018年2月に全国大学生活協同組合連合会が公表した学生生活実態調査の結果で、1日の読書時間が「ゼロ」と答えた学生が53パーセントだったことがわかり話題になるなどしました。

読書の実態調査では、「1日に何分、本を読むか」や「1か月に何冊、本を読むか」などがよく聞かれるようです。

いっぽうで、「いつ読書をするか」、つまり読書の時間帯については、さほど調査で聞かれることはありません。関心はさほどないということでしょうか。本を読まない人にとってはあまり関係ないことですが。

読書の時間帯を聞く実態調査はすくないながらも、あります。たとえば、熊本商工会議所が2008年に熊本市内の会員事業所の135人を対象におこなった調査では、読書をする時間帯も聞いています。

それによると、複数回答可で、「早朝」が10.5パーセント、「午前中」が3.2パーセント、「午後」が13.7パーセント、「夕方」が9.5パーセント、「夕食後」が12.6パーセント、そして「就寝前」が65.3パーセントだったとのこと。「就寝前」が圧倒的に多いという結果でした。

この「読書の時間帯は就寝前」という向きは、一般の人びとにもだいたい当てはまるものではないでしょうか。ほかにやるべき仕事や家事などをすべて済ませ、「あとは寝るだけ」という状況のなかで本を読む、というものです。

この実態調査とは対照的に、読書の“効果”を考えた理論では、だんぜん「朝の読書が効果的」とする論が強いようです。いわく、朝は交感神経が優先され、達成意欲や前向きな気分が生じやすい時間だとか、朝の時間帯は脳の情報が整理されているため、夜より3倍も読書の効率が高まるとか。

たしかに、朝の時間帯は多くの人にとって、作業効率が高くなっていることでしょう。作業効率が高くなっている時間帯に読書をすれば、より文章が頭に入ってくるかもしれません。

しかし、「朝の読書が効果的」というのは、あくまで「読書をするならどの時間帯が効果的か」という疑問に対して答えたもの。おなじ理論でいえば、「朝の仕事は効果的」「朝の勉強は効果的」「朝の創作は効果的」となります。

作業が効率的になるとされる朝の時間帯に、読書をするか、それとも仕事をするか。多くの人は、仕事や勉強を優先するのではないでしょうか。朝の時間帯に、仕事をさしおいて読書するのは、もったいないと感じるからです。朝から片づけるべき仕事があるなかで読書をしても、あまり頭に入ってこない、ということもありえます。

こうした心理から、一日のこなすべきことをいちおう済ませてから読書をするというのが、多くの人にとっての現実的な生活のしかたとなっているのでしょう。

さまざまなものごとをこなさなければならない生活のなかで、自分にとってむりのない時間帯に読書をするというのが、効率的かはべつとして、最適な読書のしかたといえるのではないでしょうか。

参考資料
全国大学生活協同組合連合会 2018年2月26日発表「第53回学生生活実態調査の概要報告」
https://www.univcoop.or.jp/press/life/report.html
熊本商工会議所「なんでも調査 読書編 結果発表」
http://www.kmt-cci.or.jp/pdf/nandemo_dokusyo_0806.pdf
BOOK・OFF Onlineコラム「効果的な 読書の時間帯とは」
http://pro.bookoffonline.co.jp/book-enjoy/reading-skills/20180310-dokusyo-koukateki-jikantai.html
くらしのワンシーン 2018年7月14日付「本を読むタイミングはいつ? 読書時間を確保するコツ! 時間帯で効果が違う?」
https://senkokugoshochi.com/koharu/book-when-to-read/
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