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花づくりを抑える遺伝子のはたらきが低温で鈍り、花が咲く

シロイヌナズナの花
写真作者:EfrenAve

草木が花を咲かせるかどうかには温度がおおいにかかわっています。たとえば、アブラナ、シロイヌナズナ、またキャベツなどをふくむアブラナ科の植物では、しばらくのあいだ低い温度を経験することで花が咲くということがわかっています。温かい日がつづくと花が咲くという印象がありますが、逆なのですね。

どうして、しばらくのあいだ低い温度を経験すると、アブラナ科のような植物は花を咲かせるのか。それには、やはり開花を調節する遺伝子がかかわっています。

「花成抑制遺伝子」(FLC:Flowering Locus C)とよばれる遺伝子があります。研究でよく使われるモデル植物であるシロイヌナズナから見つかったもの。アブラナ科の植物のほか、ヒルガオ科のアサガオなどもこの遺伝子をもっています。

よび名に「花成抑制」とつくように、花成抑制遺伝子は花を咲かせるのを「抑える」遺伝子です。花を咲かせることにかかわる下流の遺伝子に対し、花を咲かせないように命令を出すわけです。たとえば、日が長くなることで開花を促すFTという下流の遺伝子のはたらきを抑えつけるなどします。

つまり、花成抑制遺伝子が活発にはたらいているときは、植物は花を咲かせることを許してもらえないわけです。このとき植物は、花を咲かせるかわりに葉をつくります。

ところが、摂氏4度ほどの低い温度がつづくと、この花成抑制遺伝子のはたらきが鈍くなっていきます。花を咲かせないような命令が出なくなってくるわけですから、下流の開花をつかさどる数々の遺伝子ははたらくようになります。植物は束縛から解かれたように花を咲かせることになるわけです。

一般的に、植物が低い温度をしばらく経験することで花を咲かせるのは、低い温度が休眠を打ちやぶる刺激となっているからと説明されます。この休眠打破というしくみは、よくサクラの開花で話題になりますが、シロイヌナズナなどの植物も休眠打破を経験していると考えられています。

参考資料
工藤洋「季節を測る分子メカニズム」
https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/179447/1/6_23.pdf
新潟大学 アサガオの生理学「花成生理学序論」
https://www.sc.niigata-u.ac.jp/biologyindex/wada/p11/p11-6-1.html
山口礼子、阿部光知、荒木崇「花芽をつくるときを決める制御システム」
http://lifesciencedb.jp/dbsearch/Literature/get_pne_cgpdf.php?year=2006&number=5105&file=q4enW6ZGHWLA7XX8HlqUjQ==
藤倉潮ら「シロイヌナズナ種子における低温刺激応答性と休眠打破機構の分子解明」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspp/2004/0/2004_0_310/_article/-char/ja/
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