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「忙しくて」に対する常套句は必然的

イラスト作者:Paul Downey

人と人の会話には、「こう言うと、こう返される」といった決まった展開があるのかもしれません。特定の展開に話が進んでいくと、みんながみんなではありませんが、多くの人が、おなじようなことを言ってくるわけです。もちろん、「それでは失礼します」「どうもお疲れさまでした」といったあいさつの常套句ではなく……。

ある自由業の人物は、あまりにも多忙になってしまっていることを、仕事仲間などの知人に漏らしました。

「もうここのところ忙しくて……」

すると、本人曰く「十中八九」は、相手からおなじことを声がけされるといいます。つぎのような文句です。

「いいことじゃないですかぁ」

この人物が仕事で忙殺されている状態を、まわりの知人は「いいこと」だと表するわけです。しかし当人は心の奥底で「はたして、この状況はいいことなのだろうか。身がもたなくなりそうだというのに」とつぶやいているといいます。

「忙しすぎて」に対して「いいことじゃないですかぁ」と常套句のような返事がくるのは、必然的なのかもしれません。「いいことじゃないですかぁ」と返すのがもっとも無難であり、相手との仲を円滑に保てるからです。

「もうここのところ忙しくて……」
「仕事がたくさん入ってくるアピールをするんじゃない! 嫌味か!」

このように“本音”を言えば、あっというまにその人物との関係性は崩れていくでしょう。だから、そう思っていてもなかなか口に出さないものです。

「もうここのところ忙しくて……」
「それはたいへんですね。お体、大切になさってくださいね」

このように気づかいする返事も考えられなくなりません。しかし、「忙しくて」と言われた側は、どれくらいの忙しさなのか推しはかりづらいものです。体を壊すおそれのあるほど忙しいのか判断しかねるし、とっさに「そこまで気づかうことだろうか」とも考えるのでしょう。なかなか、「お体、大切に」と口から出ることはないようです。

「もうここのところ忙しくて……」
「暇になるといいですね」

これも、「仕事がこない状況を望んでいる」と思われてしまうため、なかなかいえないものでしょう。

消去法でこれらべつの可能性をなくしていくと、「いいことじゃないですかぁ」がもっとも、そして唯一といってよいほど、この会話においてふさわしい返事になるわけです。
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