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キンモクセイ、日本で薫るのは雄株


10月。台風一過の南風に乗って、甘い香りがあちこちから運ばれてきます。キンモクセイの花の香りです。緑の葉のなかで、ひときわ花の黄色が目立つため、「あの黄色から甘い香りが放たれているのか」と直感できます。

キンモクセイ(金木犀)はモクセイ科モクセイ属の小高木。中国原産ですが、学名は“Osmanthus fragrans Lour. var. aurantiacus Makino”。「日本の植物分類学の父」とも称された植物学者の牧野富太郎(1862-1957)が名づけました。

花の香りがこれほど強い身近な植物は、キンモクセイのほかになかなかないのではないでしょうか。香りには、β-イオノン、リナロール、γ-デカラクトン、リナロールオキシド、cis-3-ヘキセノールといったさまざまな成分が混ざりあっています。キンモクセイはそれぞれの成分を識別してはいないでしょうが。

キンモクセイは雄の株と雌の株がそれぞれべつにあり、受粉することで種子が結ばれます。しかし、日本で甘い香りを放っているキンモクセイは、まずもって雄の株なのだそうです。なぜなら、日本では果実としての利用がないため。日本人は、もっぱら花のきれいさや香りの甘みを鑑賞するために中国からとりいれただけなので、花をよく咲かせる雄株を挿し木などによって広めているのだそうです。

桜で雌雄同株のソメイヨシノは、人に愛されたがために、つぎつぎ人の手で挿し木されて、繁栄に成功したといわれます。キンモクセイもまた人に愛されたがために、つぎつぎ挿し木されていったわけですが、雌株は放っておかれていることになります。

日本での繁栄をなしとげているものの、あるのは雄株だけという状況を、キンモクセイはどう受けとめているのでしょうか。

参考資料
日本大百科全書「モクセイ」
https://kotobank.jp/word/モクセイ-1600692
京都市都市緑化協会「みどりの相談所だよりQ&A キンモクセイは全部雄株だと教えられましたが本当でしょうか。雄株だとしたらどうしてあんなに沢山の花をつけるのですか?」
http://www.kyoto-ga.jp/greenery/soudan/field/field004/qa_000311.html
ウィキペディア「キンモクセイ」
https://ja.wikipedia.org/wiki/キンモクセイ
「人物伝 植物学者 牧野富太郎 なぜ、どう描いたのか」『サイエンスウィンドウ』2013年春号
http://sciencewindow.jst.go.jp/html/sw49/sp-007
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