木々の色味は先入観と異なりやすい(1)森林編
前もってつくられた固定的な観念を「先入観」といいます。人のもつ先入観は、実際のもののようすとかなり異なっていることがあります。
日本人が好む木々の表情のうち「サクラの色」も、先入観と実際の色がだいぶ異なるものといえるのではないでしょうか。
色の種類のひとつに「桜色」があります。ウィキペディアを見ると、「表示されている色は一例です」としつつ、「シアン0%、マゼンタ5%、イエロー2%、ブラック0%」という色の構成が示されています。これは下の画像のような色です。
「桜色」シアン0%、マゼンタ5%、イエロー2%、ブラック0%
まずこの時点で、「桜色」とよばれる色では、マゼンタが5%、イエローが2%使われているだけで、ほとんど色が使われていないことがわかります。
では、この「桜色」は、実際のサクラの色味を反映しているでしょうか。
日本の代表的なサクラといえばソメイヨシノです。下にある写真のように、ソメイヨシノの並木は、日本人にとって見慣れた風景といえます。
ソメイヨシノの並木
この写真にフォトショップの「モザイク」をかけてみるとどうでしょうか。つぎのようになります。
上のソメイヨシノの並木の写真に「モザイク」をかけた画像
この画像のなかで、わりかし明るめの画素を抜きとって、フォトショップの「スポイト」というツールで、色を抽出してみます。
すると、「シアン19%、マゼンタ20%、イエロー16%、ブラック0%」となっていました。
シアン19%、マゼンタ20%、イエロー16%、ブラック0%
影になっている部分もあるからでしょう、実際のソメイヨシノの写真から抽出した色は、シアンの要素も入っており、冒頭の「桜色」にくらべると、だいぶくすんでいるといえます。
「桜色」と実際のソメイヨシノの写真から抜きとった色にも若干のちがいがあることがわかります。それよりも、大きなところでいえるのは「サクラの色」というのは、基本は無色であり、そこにわずかながらマゼンタなどの色の要素が加わっているくらいのものであるということです。
なお、ソメイヨシノは人が挿し木によって広めたもの、つまりクローンですので遺伝的な特徴はどのソメイヨシノもおなじ。つまり、花びらの色はすべておなじです。また、ソメイヨシノの花を桜色にするのは、アントシアニンという色素によるもので、花が開いた直後よりも散るころのほうが、この色素の量は増えるため、より赤みを帯びるようになります。
もうひとつだけ、日本人が好む木々の表情について、色の分析をしてみます。つづく。
参考資料
ウィキペディア「桜色」
https://ja.wikipedia.org/wiki/桜色
日本植物生理学会 植物Q&A「桜の花の2つの色」
https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=2642
2018.09.10 Monday
木々の色味は先入観と異なりやすい(2)サクラ編
コメント
コメントする
この記事のトラックバックURL
トラックバック機能は終了しました。
トラックバック
(C) 2024 ブログ JUGEM Some Rights Reserved.