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工学で「どうやって」でなく「なんで」を研究する

写真作者:Lenny K Photography

工学というものは、知られていることを活かして、もののつくりかたを探る学問です。工学の知識や考えかたを使って、より多くのものを、より効率よくつくるわけです。

こうしたことから、工学の分野では昔から「どうやってつくるか」が考えられ、探られてきました。

たとえば、米国の工学者だったアラン・モーゲンセン(1901-1989)は1930年ごろ
「作業研究」の大切さを説きました。作業のしかたを測るなどして、ものをつくるときの作業をできるだけ効率よくするための研究です。

また、米国の工学者だったハロルド・メイナード(1902-1975)は1939年「メソッド・エンジニアリング」という研究分野を唱えました。ものづくりをするうえでふさわしい生産量や在庫量、また品質や費用などを保つためにどのような作業をすればよいか分析し、設計するような研究です。作業研究とほぼおなじともいわれます。

こうして「どうやってつくるか」という「手段」あるいは「方法」に目が向けられていくいっぽうで、その後「なぜつくるのか」という「目的」にも目を向けるべきだという考えかたが出てきました。そして「なぜつくるのか」を、工学の知識や考えかたをとりいれて研究する「目的工学」とよばれる分野が新たに立ちあげられたといいます。

「目的工学」を唱える多摩大学大学院教授の紺野登さんは、「目的工学とは、思いをもって事を成し遂げようとする当事者間による、相互作用的な目的群の組織的調整」と述べています。

組織がなにかをなしとげようとするときには、組織としての大きな目的もあれば、その目的をミッションとして具体化した中くらいの目的もあります。また、その組織に参加する人びとがそれぞれにもつ小さな目的もあります。これらのいろいろな種類の目的を「目的群」とよび、目的群をうまく調整していくことで組織がうまくまわるようにしようとするもののようです。

いろいろな目的をどう統合させて、大きな目的をかなえていくかに重きが置かれています。その背景には、あるひとつのものづくりに、より多くの人が携わるようになったということがあるのでしょう。

人は作業をつづけているうちに、「なぜそれをするのか」「なぜそれをつくるのか」といった目的を忘れがちなもの。目的の見えない作業がまったく価値のないものであるかについては議論の余地はあるでしょうが、すくなくとも目的が明確になっているほうが、総じて作業もはかどるでしょうし、作業者のやりがいも大きくなることでしょう。

「目的工学」は、手段はそろっていても目的が混乱しているといった社会のありかたに石を投じるものといえそうです。

参考資料
ウィキペディア「方法研究」
https://ja.wikipedia.org/wiki/作業研究
日本大百科全書「メソッド・エンジニアリング」
https://kotobank.jp/word/メソッド・エンジニアリング-141374
紺野登「イノベーションのためのデザイン思考と目的工学」
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu20/siryo/__icsFiles/afieldfile/2013/09/11/1338420_02.pdf
Biz Zine 2015年6月19日付「イノベーションが“日常”になる時代の『目的工学』とは? 第2回」
https://bizzine.jp/article/detail/836
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