科学技術のアネクドート

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オートファジー、大もとの動作は「分解する」

写真作者:Zappys Technology Solutions

いろいろなものごとが、それぞれ関わりなくなされているように感じられても、それらに通じる大もとの「動作」をつかむと、やはり関わりがあるのだと感じられるものです。酒、納豆、鰹節。関わりないささそうなこれら食べものが、いずれも「発酵させる」という大もとの動作でなされているといった具合に。

生命科学の分野には「オートファジー」とよばれるしくみがあります。2016年にノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅良典さんの研究分野だったことから、その名がよく知られるようになりました。

オートファジー(autophagy)は、細胞が細胞内のたんぱく質を分解するしくみのことを指します。細胞が「自分自身」(auto)を「食べる」(phagy)というおこないからこうよばれています。

オートファジーが生きもののからだにどんなことをもたらすのか。大隅さんが見つけたのは、飢餓に陥ったときに「栄養源を保つ」というオートファジーの作用です。オートファジーによって細胞のたんぱく質がさまざまなアミノ酸に分解されて、これが栄養源としてふたたび使われるようになります。

しかし、その後の研究などで、オートファジーのはたらきには、栄養源を保つことのほかにもさまざまあることがわかってきました。

ひとつは、「細胞を代謝させる」というものです。

人などの体では、化学変化によってあらたな物質をつくり、要らなくなった物質を出す、新陳代謝がたえずおこなわれていますが、細胞ひとつひとつでも、体の新陳代謝とおなじようなことがおこなわれているといいます。細胞は、オートファジーによってみずからのたんぱく質を分解しますが、その7、8割は、べつの細胞のたんぱく質合成に使われるといいます。「壊しては造り、壊しては造り」をくりかえしているわけです。むだな営みのようにも思えますが、この細胞の新陳代謝がなされないと、細胞は弱るなどして、がん、2型糖尿病、心不全、感染症、炎症といったさまざまな病気が生じることがわかっています。病気が生じないようにするには、オートファジーによる細胞の新陳代謝が大切というわけです。

また、オートファジーには「害ある物質をとりのぞく」というはたらきもあります。

細胞のなかには小器官とよばれる、なんらかの機能をもったかたまりがさまざまあります。たとえば、ミトコンドリアという小器官は呼吸にかかわります。こうした小器官のうち傷ついたものを細胞のなかで放っておくと、生きものの体は病気になりやすくなります。おなじく、異常な状態となったたんぱく質や外から来た病原体を細胞のなかで放っておいても病気になりやすくなります。そこで、オートファジーのしくみで、こうした異常のもととなる物質をとりのぞくわけです。

ほかにも、オートファジーは、生きものの初期段階における胚が必要とするアミノ酸を得るために必要であるなど、さまざまな役割が解きあかされてきています。

オートファジーのしくみに通じる「動作」はなにかといえば「分解する」となるでしょう。よりかんたんなことばで「ばらばらにする」といってもよいでしょう。

細胞がみずからを分解するからこそ、その結果として栄養源となる材料が生じたり、ふたたび細胞のたんぱく質がつくられたり、細胞にとって要らないものがとりのぞかれたりするわけです。また初期胚にとって必要なアミノ酸は、母にあたる細胞のたんぱく質がオートファジーで分解することによりつくられるといいます。

「分解する」といった大もとの「動作」から、これからもオートファジーの未知なるはたらきがわかってくるかもしれません。

参考資料
デジタル大辞泉「オートファジー」
https://kotobank.jp/word/オートファジー-685600
大阪大学大学院 吉森研究室「オートファジー」
http://www.fbs.osaka-u.ac.jp/labs/yoshimori/jp/research/030/
東京大学医学部・大学院医学系研究科 水島研究室「オートファジー(自食作用)」
http://square.umin.ac.jp/molbiol/research/proffessional.html
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