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「現場」が直接はたらかせるのでなく「本部」に指示を出してもらう

写真作者:ma world peace

人の社会的活動では、よく「現場と本部」というふたつの場があることがあります。現場とは、活動の対象となるものごとがまさにあったりおこなわれたりする場のこと。いっぽう本部とは、現場とはべつに大切な方針を定めたり判断を下したりて、現場にいる人を指示するような場のことをいいます。

ときに現場の長がその場で現場の人びとに指示をする、といったこともあります。現場を見つづけている人のほうが、本部にとどまっている人より的確な判断ができるということなのでしょう。

いっぽうで、現場にいながらも、みずからで現場の人たちがどう動くかを判断せず、かならず本部から指示してもらう、という人もいます。あたえられた役割を重んじているような人でしょうか。

人のからだのなかでも「現場にいながら、みずからで現場がどう動くかを判断せず、“本部”から指示を出してもらう」という振るまいをする物質があります。

胃には、「グレリン」とよばれる化合物があります。グレリンが胃のなかで生じると、その情報が胃のところまで伸びている神経をとおって脳まで伝わります。そして脳の視床下部という部分までグレリンの情報が伝わると、ここの神経細胞を活性化します。

胃で生じたグレリンの情報を視床下部が受けて、視床下部の神経細胞が活性化すると、食欲が増進します。食欲が増進すれば、その人は食べることになりますから、食べたものは胃に達します。すると胃は、その食べものを消化すべく、胃酸を出したり、蠕動運動をしたりして、活発にはたらくことになります。

つまり、胃で生じたグレリンの情報は、脳の視床下部を介して食欲増進作用をもたらし、結果的に胃の動きを活発にさせるわけです。胃という「現場」に現れながら、胃に直接はたらきかけるのでなく、脳という「本部」に合図を出して、胃がよく動くことにつながるようなはたらきかけをしていると捉えることができます。

体内の特定の場所でつくられ、特定の組織や器官の活動を調節する物質を「ホルモン」といいます。グレリンはホルモンの一種とされています。

グレリンのはたらきがわかったことは、胃がたんに消化を担うだけでなく、食欲などにもかかわっているということがわかったことを意味します。

参考資料
中里雅光「胃から発見された摂食亢進ペプチド:グレリン」
http://jams.med.or.jp/symposium/full/124045.pdf
ウィキペディア「グレリン」
https://ja.wikipedia.org/wiki/グレリン
知恵蔵「グレリン」
https://kotobank.jp/word/グレリン-189055
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