科学技術のアネクドート

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研究を支えて100年、数々の統合を経て現在へ


(2018年)8月19日(日)のこのブログの記事「『若手研究者にもっと科研費を』と改革案」に「2018年は、科研費の前身にあたる『科学奨励金』が設立された1918年から100年目」とあります。「科研費」とは「科学研究費補助金」のことで、大学などでの科学研究の助成を目的とする補助金のこと。

では、この100年、この補助金はどのように歩んできたのでしょうか。

1918(大正7)年にはじまった「科学奨励金」の制度は、文部科学省の説明によると「学術新興方策の一つ」だったようです。この年は、1914(大正3)年から始まった第一次世界大戦が終わった年。「第一次世界大戦を契機とする欧米諸国の科学研究動員計画のような重点研究課題に対応する」といった目的があったともいいます。なお、このときの科学奨励金は、自然科学の研究分野にあたえられるものでした。これとはべつに「人文科学助成金」が1946(昭和21)年に始まっています。

1932(昭和7)年には、財団法人としての日本学術振興会が設立されています。費用は御下賜金、つまり天皇陛下からのお金によるもの。日本学術振興会は、いまは独立行政法人となり、科研費の交付などの事業をしています。

1939(昭和14)年、「科学奨励金」とはべつに、「科学研究費交付金」とよばれる制度が設けられます。文部科学省によると、この交付金は「準戦時体制下科学封鎖の危機に際して今日の名称で計算され」たもの。戦争の色が濃くなっていった当時、研究に使われる本や物資などが研究者に行かなくなったり、留学生が来づらくなったりと、科学研究を自由におこないづらい状況があったようです。「科学封鎖」ともいえる、こうした状況を打開するための研究資金といったところでしょうか。

太平洋戦争敗戦の1945(昭和20)年以降、いまの科研費につながる、ほかのさまざまな交付金も設けられていきます。1945年から「科学試験研究費補助金」が、1947(昭和22)年から「研究成果刊行費補助金」が始まりました。これらは、上の「科学研究費交付金」とともに1965(昭和40)年、「科学研究費補助金」として統合されます。

いっぽう、最初に始まった「科学奨励金」も、1946(昭和21)年からの「科学研究助成補助金」に1952(昭和27)年、「人文科学助成金」ともども統合されました。この「科学研究助成補助金」も1956(昭和31)年に、「科学研究費交付金」に統合されました。

こうして、さまざまな種類の交付金や補助金が統合されていき、1965(昭和40)年からの「科学研究費補助金」に一本化されていったわけです。そして1968(昭和43)年度からは、いまの科研費の制度に通じる、書類審査と合議審査による審査方法などの基本的なしくみが築かれました。

2011(平成23)年には、科研費の「基金化」が始まりました。基金化とは、補助金を積みたてにすること。これにより、複数年の研究期間を通じて研究費が確保されるため、研究者の研究の進めかたによっては、研究費を前だおしで使うなどができるようになりました。そこで、いまの科研費は、従来の「科学研究費補助金」と、基金化でできた「科学研究助成基金」によって運営されていることになります。

学術をめぐるほかの多くの制度もそうですが、科研費もさまざまな統合や発展を経た末に、100年を迎えることになったわけです。

参考資料
文部科学省 科学技術・学術審議会 学術分科会 2014年8月27日「我が国の学術研究の振興と科研費改革について」
http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/
afieldfile/2014/09/17/1351970_02.pdf

文部科学省 科学技術・学術審議会 学術分科会 2014年6月17日「科研費制度を巡る状況」
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu4/030/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2014/07/17/1349729_01.pdf
文部科学省『文部科学白書』「帝国学土院と学術研究会議」
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/others/detail/1317727.htm
文部科学省「わが国の教育の現状」(昭和28年度)
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/hpad195301/hpad195301_2_164.html
日本学術振興会「科研費の『基金化』」
https://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/01_seido/06_kikinka/index.html
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