科学技術のアネクドート

<< 住みやすさ世界3位の大阪「文化と環境」「都市基盤」以外は100.0 | main | 除塵機でごみを除きながら水を川へ >>
「若手研究者にもっと科研費を」と改革案


(2018年)8月17日(金)付のこのブログの記事「基礎分野の研究者『頼りの綱は科研費』」では、基礎的な分野での研究を進めようとする研究者たちにとって、科学研究費補助金(科研費)がいかに依存しなければならないものか、といったことをとりあげました。

科研費をめぐっては、政府が改革の必要性を戦略のなかに示しています。政府は2018年
6月に「統合イノベーション戦略」という政策を掲げました。これは、科学技術の振興についての総合的な計画「第5期科学技術基本計画」の5年計画のうちの3年目を迎え、「PDCA(立案・計画、実施、検証・評価、改善)サイクル」の「Action」(改善)として実行するものと位置づけられています。

「統合イノベーション戦略」で、政府は科研費についてはつぎのような改革案を示しました。

「研究費を獲得できる若手研究者の割合の増加に向けて、2023年度までに科研費における採択件数に占める若手研究者の比率が、応募件数に占める若手研究者の比率を10ポイント以上上回る」

つまり、若手研究者からの科研費に応募の比率がたとえば30パーセントであるとしたら、若手研究者の採択を40パーセント以上にする、といったことになります。

この方策のねらいは「研究生産性の向上」にあるもよう。政府は、優秀な若手研究者に挑戦の機会を増やしたり、年齢にとらわれない適材適所の配置したりすることを「目指すべき将来像」として挙げており、その目標のひとつとして、上にあるような科研費の若手研究者への重点配分を掲げているわけです。なお、科研費を管理している日本学術振興会の説明には「若手研究」は「39歳以下の研究者が1人で行う研究」とあります。

若手研究者への科研費の支援が手あつくなるということは、その分どこかの部分が切りつめられることにもなります。政府は「統合イノベーション戦略」で「大型種目から若手研究者を中心とした種目への重点化等の配分の見直しを推進」するとしています。

「大型種目」とは、科研費の種類のうち、研究費の規模が大きい種目のことで、具体的には「特別推進研究」「新学術領域研究」「基盤研究(S)」などが当たると考えられます。

大規模な研究に科研費を投入するのも大切だけれど、挑戦したいと思っている若手の研究者たちの研究に科研費を投入することも大切だから、若手をこれまでより支援していこうということと捉えられます。

若い研究者のなかには、5年ないし3年で評価を得られるような研究をしなければ、その先の研究費獲得がむずかしくなる、あるいはおなじく5年ないし3年ほどで所属先を移らなければならないといった環境に置かれている人もすくなくありません。研究費を拡充する効果は、若手の研究者がより研究をしやすい環境を得られることによって、発揮されていくものかもしれません。

2018年は、科研費の前身にあたる「科学奨励金」が設立された1918年から100年目にあたります。

参考資料
内閣府 2018年6月15日閣議決定「統合イノベーション戦略」
http://www8.cao.go.jp/cstp/tougosenryaku/tougo_honbun.pdf
内閣府「第5期科学技術基本計画の概要」
http://www8.cao.go.jp/cstp/kihonkeikaku/5gaiyo.pdf
文部科学省・日本学術振興会「科研費ハンドブック」
https://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/15_hand/data/h29/handbook_kenkyuusya.pdf
文部科学省「科研費改革の進展」
http://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/hojyo/__icsFiles/afieldfile/2017/06/29/1387297_01.pdf
日本学術振興会「科学研究費助成事業」
https://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/30_front/index.html
毎日新聞 2018年7月26日付「社説 日本の科学研究力『選択と集中』が招く低迷」
https://mainichi.jp/articles/20180726/ddm/005/070/035000c
| - | 23:59 | comments(0) | trackbacks(0)
コメント
コメントする









この記事のトラックバックURL
http://sci-tech.jugem.jp/trackback/4695
トラックバック
CALENDAR
S M T W T F S
    123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930 
<< November 2018 >>
SPONSORED LINKS
RECOMMEND
フェルマーの最終定理―ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで
フェルマーの最終定理―ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで (JUGEMレビュー »)
サイモン シン, Simon Singh, 青木 薫
数学の大難問「フェルマーの最終定理」が世に出されてから解決にいたるまでの350年。数々の数学者の激闘を追ったノンフィクション。
SELECTED ENTRIES
ARCHIVES
RECENT COMMENT
  • アナウンサーも日常的に「やつ」
    ★ (08/03)
  • “遅れて来た”日産自動車、“満を持して”リーフ
    うぼで (06/13)
RECENT TRACKBACK
amazon.co.jp
Billboard by Google
モバイル
qrcode
PROFILE