科学技術のアネクドート

<< 大人たちのすることで10歳代が影響を受け…… | main | 絞りを狭めて、手前から奥までぼかさず >>
商品の目的が実現し、商売できなくなる


人のなにげない発言には、ものごとへの考えかたについて深く考えさせる内容が潜んでいるものです。そのなかには、「なぜ、会社を続けるのか」といったことを考えさせるものもあります。

2018年の夏から秋にかけての猛暑により、蚊の数が減っているといわれています。蚊が活動するための適温は25度から30度。ところが、各地でこの温度帯をはるかに上まわる35度以上の気温となっているため、蚊の活動がにぶっているということです。

蚊が多いと感じれば、人は蚊取り線香などの虫よけ薬を買うようになります。しかし、そう感じなければ、人はこうした商品を買いません。

蚊が多いと人が感じないと、虫よけ薬を作り、売っている会社は困ってしまいます。蚊がいるはずの夏に蚊がいなければ、商売あがったりだからです。そうしたことが、今年2018年に起きているようです。

今年の異変を伝える報道では、虫よけ薬をつくる会社の経営者が、取材にこう答えたといいます。

「夏バテ気味の蚊の『復活』を待ちたい」

おそらく、この人物は「自分たちの作った商品がもっと売れてほしいので、夏ばて気味の蚊の復活を待ちたい」と言いたかったのでしょう。

なぜ、会社を続けるのか。

この人物にとって、自分が仕事をする理由は、「虫よけ薬をより多くの人に売りたいから」もしくは「虫よけ薬をより多く使ってもらいたいから」ということなのでしょう。

一方で、虫よけ薬が存在する理由は「嫌な蚊をいなくさせるため」です。その蚊が、今年はあまりいません。

蚊をいなくするための商品を作っている会社は、蚊がいなくなってしまうと商売できなくなってしまうわけです。そして、今年、商品を作るうえで目標としていた「蚊をいなくする」は、その商品が使われることなく達成されました。

では、虫よけ薬をつくる会社の人は取材に対して、「蚊がいなくなり、私たちの夢も達成されました」と言えばよいのでしょうか。

経営者は、社員のために、あるいは株主のために、会社を保つ必要があります。そのようなことはなかなか言えないでしょう。苦渋の末に「夏ばて気味の蚊の復活を待ちたい」という本音が出てきたのではないでしょうか。

会社がある理由とは、「おなじ実現したいことをめざす人びとが集まって、その実現したいことをおこなう」ことが本義とされます。しかし、実現したいことが実現しても、会社は続いていかなければならない。矛盾の要素をふくむこの状況は、深く考えさせるものです。

参考資料
スポーツニッポン 2018年8月7日付「活動適温25〜30度 蚊の逆襲 もう少し下がればきっと来る」
https://www.sponichi.co.jp/society/news/2018/08/07/kiji/20180806s00042000379000c.html
日本経済新聞 2018年8月8日付「猛暑で蚊も夏バテ? フマキラやアース製薬、大幅減益」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO33948230Y8A800C1DTB000/
| - | 23:59 | comments(0) | trackbacks(0)
コメント
コメントする









この記事のトラックバックURL
http://sci-tech.jugem.jp/trackback/4685
トラックバック
CALENDAR
S M T W T F S
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031     
<< December 2018 >>
SPONSORED LINKS
RECOMMEND
フェルマーの最終定理―ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで
フェルマーの最終定理―ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで (JUGEMレビュー »)
サイモン シン, Simon Singh, 青木 薫
数学の大難問「フェルマーの最終定理」が世に出されてから解決にいたるまでの350年。数々の数学者の激闘を追ったノンフィクション。
SELECTED ENTRIES
ARCHIVES
RECENT COMMENT
  • アナウンサーも日常的に「やつ」
    ★ (08/03)
  • “遅れて来た”日産自動車、“満を持して”リーフ
    うぼで (06/13)
RECENT TRACKBACK
amazon.co.jp
Billboard by Google
モバイル
qrcode
PROFILE