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設計にともなう思想を明らかに

写真作者:Lyncconf Games

人工知能がこの先どれほど人間のような創造的行為をするかはわかりませんが、いまのところ「設計する」という営みは、人間だからこそなせる業といえそうです。

設計とは、建てものを建てたり、ものを作ったりするときに、対象となるもののつくり、材料、作りかたなどの計画を図に表すことをいいます。そして、意味が一般化して、計画を立てることや、その計画のことをさすようにもなっています。

すでに存在するものをあらためて作るときには、設計する必要はさほどありません。そのものをつくる設計がすでにされているからです。よって「設計する」という行為は、たいていにおいて「新しいものを作る」ときにおこなわれるものとなります。

設計には、よく「思想」がともなうともいわれます。思想とは、一般的には、生きる世界や人生についてのひとつのまとまった考えのことをいいます。「設計の思想」とは、設計をするうえでのまとまった考えということになります。工学者の田浦俊春は、「設計思想」を「プロダクトを設計する際に意識する理念や戦略」と定義し、ここでの「理念」とは「あるべき姿に関与するもの」、また「戦略」とは「優先順位づけ」としています。

なにか新しいものを作るとき、人は頭を使って「こんなものを作ろう」と考えるはずです。さらに「こんなものを作ろう」と考えるまえに「こんなことで困っている」「こんな夢がある」といった思いももっているかもしれません。つまり、なにかのものを設計するとき、思想がともなうのはあたりまえともいえます。

じかし、あたりまえのことに対して「設計思想」といったように「思想」ということばがあえて使われるのは、設計するときその思想を明らかにしておくことが大切だと人びとが考えているからではないでしょうか。

どんな設計にも思想はあります。しかし、設計をする人が、設計の思想を具体的に明らかにしておくことには利点があるわけです。

その利点とはどんなものか。突きつめていけば、作られたものに接する人びとの心をより動かせるようになる、ということではないでしょうか。

設計思想を具体的に明らかにしておけば、まずそのものを作っていく人の迷いや、自己判断による誤りをすくなくすることができます。設計思想があれば「こういう設計思想があるのだから、ここにはこの材料が使われないとおかしい」「こっちの色がふさわしいに決まっている」と、おのずと選択肢の答が見つかるはずです。つまり、人の迷いや誤りがすくなくなり、全体として、作られたものにおけるあいまいな部分をなくせるわけです。

そして、作られたねらいが、あいまいでなく明らかであるものは、それに接する人の心を動かすことになります。伝えたいことが具体的で端的であるほど、そのものに接する人はその伝えたいことに心を集中させるでしょうし、設計者の考えと一致すれば、その人は共感することでしょう。たとえ、共感しないとしても「自分はこの手の作品は受けつけない」と反応させることができます。

「とりあえず手を動かして作っていく」といった考えかたもあり、そのほうが作業を速くできる可能性はあります。しかし、ものを手をかけて作るときには、時間をかけてでも設計の思想を具体的で明らかにしておくほうが、設計者にとっても、ものを作る人にとっても、ものに触れる人にとっても、作られたものに対して納得の進むものになるのではないでしょうか。

参考資料
デジタル大辞泉「設計」
https://dictionary.goo.ne.jp/jn/124370/meaning/m0u/設計/
デジタル大辞泉「思想」
https://dictionary.goo.ne.jp/jn/97175/meaning/m0u/思想/
田浦俊春「『設計思想』に関する一考察」
http://www.research.kobe-u.ac.jp/eng-mech-design/taura/img/taura_pub/Japanese/taura1017.pdf
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