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「ぴかぴか」と「光る」の似たものぶり、偶然ではあらじ

写真作者:Håkan Dahlström

「暗い海のうえで、浮標がぴかぴか光っている」とか、「照明の落とされた会場でペンライトがぴかぴか光っている」とか、「ぴかぴか光る」という表現が使われることがあります。

「光る」は「ひかる」と読むので、すべてひらがなで表すと「ぴかぴかひかる」。「ぴかぴか」という副詞の響きと「ひかる」という動詞の響きは、かなりにています。これを偶然にたものとかたづけてよいのでしょうか。

言語学や音声学などの分野では、「奈良時代よりもまえ、日本語では[h]の音は[p]の音で発音されていた」という説があるそうです。これは「ぱぴぷぺぽ」や「ばびぶべぼ」などのような両唇を使って発音する「唇音」が、緩まっていく傾向にあるという説明がつきます。逆にいえば、いまの「はひふへほ」の音は、かつて「ぱぴぷぺぽ」や「ばびぶべぼ」と発音されていた可能性があるわけです。これにしたがうと、たとえば「母」は「ぱぱ」と発していたことになります。

もし、いま「ひかる」と発音されている動詞が、奈良時代よりもまえの時代にすでにあったとすると、古の人たちはどのように発音していたでしょうか。

「ぴかる」と発音していたのかもしれません。

「ひかる」と「ぴかぴか」よりも、「ぴかる」と「ぴかぴか」のほうが、発音的にはより近いもの、というよりも、おなじ部分をふくむものといえます。

これらから導かれるのは、「ぴかぴか」と「光る」は、語源がおなじだったということです。

では、おなじ語源だったとして、「ぴかぴか」から「光る」が生まれたのか、「光(ぴか)る」から「ぴかぴか」が生まれたのか……。これについては、両方の説があるようです。「光る」の語源をめぐっては、「日気張(ひけは)る」からきたもの、「日借(ひかり)」からきたものなど、10以上の説があり、そのなかには「ぴかぴか」からきたものという説もふくまれているようです。

にたような副詞と動詞の関係では「ゆらゆら揺れる」とか「もりもり盛る」などがあります。これらからは「揺れる」から「ゆらゆら」が、また「盛る」から「もりもり」が生まれたようにも想像されます。

かつて、息子に「光宙」と名づけて「ぴかちゅう」という読みをあたえた親がいるという都市伝説めいた話がありました。世間は「『ぴか』に『光』の字を充てるだなんて、なんと粗暴な」と呆れたといいます。

しかし、「光」がかつては「ひかり」でなく「ぴかり」と発音されていたということであれば、「ぴかちゅう」という読みのつけかたは、さほど宛て字としては外れていなかったことになります。むしろ「ポケットモンスター」の登場キャラクターの名前を充てがったとされたことが驚きをもって呆れられたのかもしれませんが。

「ぴかぴか」と「光る」の関係ににているものに、「ぴよぴよ」と「ひよこ」もあります。奈良時代よりまえは、ぴよぴよと歩く鶏の赤ちゃんのことを「ぴよこ」とよんでいたのでしょうか……。

参考資料
川原繁人『音とことばのふしぎな世界』
https://www.amazon.co.jp/dp/4000296442
ウィキペディア「唇音退化」
https://ja.wikipedia.org/wiki/唇音退化
日本語と日本文化「擬音語や擬態語を語根とする言葉」
http://japanese.hix05.com/Language3/lang314.giongo.html
小池小夜子「母は昔パパだった 音韻変化の話」
http://www.iciea.jp/i-news/pdf/107/i-News107-15.pdf
ひかりのひゅー「光ひかひか」
http://asam.asablo.jp/blog/2010/05/05/5064944
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