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高熱に伏せた病床で自然淘汰の考え浮かぶ

高熱が出たときに寝ていると、ふだんは考えたり感じたりしないようことが頭のなかでぐるぐるめぐるような感覚に陥ることはないでしょうか。

高熱になると、脳の状態が正常でなくなり、幻覚、言動異常、意識障害などが生じるといいます。頭のなかで考えがぐるぐるめぐる現象は、これらまで深刻ではないものの、やはり脳の状態が通常と異なることから生じるものと考えられそうです。

ときに、高熱で頭のなかで考えがぐるぐるめぐるという個人の現象が、自然科学の発展につながることもあるようです。

英国の生物学者にアルフレッド・ラッセル・ウォーレス(1823-1913)がいます。おなじく英国の生物学者だったチャールズ・ダーウィン(1809-1882)より遅く生まれて、遅くまで生きた人物です。マレー諸島を中心に生物相を調べ、動物の分布について「ウォーレス線」という境界線を提唱したことなどで知られています。


アルフレッド・ラッセル・ウォレス

1853年2月のこと。ウォーレスは、南洋アジアのハルマヘラ島にあるドディンガという村に滞在していたところ、高熱が出て、病床に伏せていたといいます。おそらくマラリアに感染していたのでしょう。

そうしたなか、突然、ウォーレスの頭のなかに「自然淘汰」の考えが現れたといいます。自然淘汰とは、ある生きものの種類に生じた遺伝的変異個体のうち、生存に有利な個体が生きのこること。

このとき、ウォーレスは、英国の経済学者トマス・ロバート・マルサス(1766-1834)が著した『人口論』について考えをめぐらせていたといいます。『人口論』では、世界の人口は、人びとがつくる食糧の量によって制限されるものであり、その制限より人口が増えようとすると、飢え、疫病、食糧の奪いあいなどで人口が減り、総人口が調節されるといったことが書かれてあります。こうした説明を、人びとの世界だけでなく、生きものの世界に当てはめられないかとウォーレスは考えたようです。

ウォーレスは間もなくして、この考えを手紙にしたため、ダーウィンに送りました。実はダーウィン『人口論』を読んで、限られた資源をめぐる争いはヒトのみならず、すべての生きものに当てはまるということを考えていたのです。ウォレスからの手紙は、ダーウィンには「他人も自分とおなじようなことを考えている」と映ったにちがいありません。ダーウィンが1859年に『種の起源』を発表したのも、ウォーレスからの手紙にプレッシャーを感じたからともされます。

結局、『人口論』から触発された自然淘汰の考えは、1858年、ウォーレスとダーウィンの二人の共同発見というかたちで発表されました。ウォーレスが高熱にうなされたことが、自然淘汰説の確立を早めたとも考えられています。

参考資料
NHK健康ch 2017年11月17日付「インフルエンザ 合併症にご用心!」
https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_530.html
オリバー・サックス『幻覚の脳科学 見てしまう人びと』
https://www.amazon.co.jp/dp/4150505195/
The Alfred Russel Wallace Website “Biography of Wallace”
http://wallacefund.info/content/biography-wallace
百科事典マイペディア「ウォーレス」
https://kotobank.jp/word/ウォーレス-209093
ウィキペディア「自然選択説」
https://ja.wikipedia.org/wiki/自然選択説
世界を変えた書物「チャールス・ダーウィン(1809-1882)種の起源」
http://www.kanazawa-it.ac.jp/dawn/185901.html

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