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「オオアライチョウシ」があれば「ウシマドマチシ」もあったりで

大洗町
写真作者:Kentaro Ohno

日本語には、その字の意味に基づいて訳した日本語で読む「訓読み」と、漢字を字音で読む「音読み」があります。たとえば、「山」という字は、訓読みでは「オオヤマ」のように「ヤマ」と発し、音読みでは「フジサン」のように「サン」と発します。なお「山」の訓読みにはほかに「ムレ」もあります。

たいていの場合、漢字2字以上の熟語では、ともにある漢字が訓読みであれば、対象とする漢字も訓読みとなるし、ともにある漢字が音読みであれば、対象とする漢字も音読みとなります。たとえば、「水色」は「ミズイロ」と読み、どちらも訓読みですし、「水田」は「スイデン」と読み、どちらも音読みです。たまに「重箱」(ジュウバコ)や、「湯桶」(ユトウ)のように、音読みと訓読みがまざる熟語もありますが……。

熟語をなす漢字は、かならずしも、ほかの漢字または意味内容がひとつのみで組になっているとはかぎりません。場合によっては、漢字または意味内容がみっつ以上からなりたっていて、かつ、訓読みと音読みが混在しているような熟語もあります。では、漢字または意味内容がみっつからなりたっている熟語で、ひとつは訓読み、ひとつは音読みという場合、もうひとつは訓読みになるのでしょうか、それとも音読みになるのでしょうか。

例として「大洗町史」を挙げてみます。茨城県東部にある「大洗町」という自治体の歴史、つまり「町史」が書かれた書物が「大洗町史」です。

「大洗町」は、「オオアライマチ」と読みます。「大洗」(オオアライ)が訓読みですので「町」も合わせて訓読みとなり「オオアライマチ」と読むことになるわけです。読みかたとしては自然といえます。

いっぽう、「町史」は、たいてい「チョウシ」と読みます。こちらも「町」(チョウ)が音読みなので、「史」も合わせて音読みとなり「チョウシ」と読むことになるわけです。やはり自然な読みかたです。

つまり、ここでの「町」は、「大洗」(オオアライ)という訓読みに影響を受けることもあるし、「史」(シ)という音読みに影響を受けることもあるわけです。

そして、そんな訓読みの「大洗」(オオアライ)と、音読みの「史」(シ)のあいだにくることもあるわけです。

では、「大洗町史」をどう読めばよいのでしょうか。

国立情報学研究所の論文、図書、雑誌などの書物情報のデータベース「CiNii」を見ると、「タイトル読み」の欄には「オオアライチョウシ」とあります。「町」は、訓読みの「オオアライ」より、音読みの「シ」のほうに影響を受けていることがわかります。

では、「訓読みの地名」「町」「史」からなりたつ熟語で、「ナニナニマチシ」と読むことはないのでしょうか。調べてみると、数はすくないながら、かつて岡山県に存在した「牛窓町」(ウシマドマチ)の町史「牛窓町史」は「ウシマドマチシ」と読むようです。

変わりだねとしては、かつて兵庫県に存在した「黒田庄町」(クロダショウチョウ)の事例があります。この町の町史「黒田庄町史」は「クロダショウチョウシ」と読みながらも、だれがその書物を著したかを記す著書標目の欄には「黒田庄町史編纂委員会」とあり、そこには「クロダショウマチシヘンサンイインカイ」という読みかたが記されています。

いったいどういうことでしょうか……。

たとえ地名が訓読みでも、「町史」の組を優先して「チョウシ」、つまり「町」を「チョウ」と読むことが多いようです。ただし、例外もあるようです。そして、訓読みと音読みのあり方を超えるような、例外中の例外もなかにはるということがわかります。

参考資料
国立情報学研究所 NiCii「大洗町史」
https://ci.nii.ac.jp/ncid/BN03415019
みどり市立図書館「牛窓町史 資料編II 考古」
http://www.e-tosho.com/midori_lib/PC/PC00401.aspx?bibnum=00000332573
佛教大学附属図書館「黒田庄町史 / 黒田庄町史編纂委員会編」
https://bulib.bukkyo-u.ac.jp/opac/opac_details/?reqCode=frombib&lang=0&amode=11&opkey=B151603945817019&bibid=1000233770&start=&bbinfo_disp=1
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