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校正作業、メール本文欄記入式をあきらめて校正紙記入式に



本づくりでは、本が完成するよりも前の段階で、文字や内容に誤りがないかを確かめ、誤りをなおすための指示をする作業をします。一般的には、原稿段階でのこの作業は「原稿確認」と、また、校正刷段階でのこの作業は「校正」などとよばれます。

校正の作業を、一般的には編集者や著者、そして場合によっては校正者という専門職の人がおこないます。

情報の電子化が進んだ今日日。本の校正刷でも紙に印刷せず、コンピュータ上の書類といえるPDF(Portable Document Format)形式の電子ファイルで表示して、そこで文字や内容の誤りを見ていくといった作業も多くなりました。

しかし、PDF形式のファイルで校正作業をおこなうとき、朱入れをどうするかがしばしば厄介な問題になります。

ある著者は、本の校正刷をPDF形式の電子ファイルで出版社から送信してもらったといいます。そして「原稿を完成度高く書いたから、修正希望を伝える分量は多くないだろう」と考えたこの著者は、「メールの本文の欄に、修正希望を記していこう」と決めました。

この場合、たとえばつぎのような伝えかたになります。
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13ページ、5行目
恐竜たちの特徴や、発見された経緯などを迫力ある絵と分かりやすい文章で紹介する。

恐竜たちの特徴や、発見された経緯などを迫力ある絵としっかりした説明の文章で紹介する。
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つまり、該当するページ番号や行数番号を書き、文の単位、あるいは節の単位、最低でも句の単位で、どう改めるのかを、「改める前」と「改めた後」を記すわけです。

この著者は、「原稿を完成度高く書いたから、修正希望を伝える分量は多くないだろう」と、いわば高をくくっていました。たとえば、200ページの本として、4ページに1か所の修正希望があれば、上のような表記を50個すればよいことになります。

しかし、この計算は大きく外れました。最初の10ページをこの方法でおこなったところ、修正希望は100箇所にもなったといいます。もし、この方式を最後まで貫けば、修正希望を上のように記す作業を2000箇所にわたりしなければならないことになります。

たしかに、PDF形式のファイルでは、たいてい文字のコピーとペーストができるので、キーボードを使ってPDFファイル上の文字をメールの本文欄に転記する手間はありません。しかし、これほど数が膨大になると、「この1文は修正が必要だからコピー・アンド・ペーストしないと」「あれ、つぎの1文も修正が必要だ。コピー・アンド・ペースト」「おいおい、つぎの1文も修正が必要なのかよ……」となり、けっきょく1ページ分の文を丸まるコピー・アンド・ペーストして、「改める前」と「改めた後」をメール本文欄に記していかなければならなくなります。

どうして、予想していたよりもはるかに多くの修正希望が生じてしまうのか。その理由のひとつには「用字・用語の統一にともない、よく使われている基本的な語彙を改めなければならないから」といったことがあるようです。前出の著者はうらめしそうにこう言います。

「『作る』とするか『つくる』とするか。『作る』で統一しようとしたんです。ところが原稿を書いたときには『つくる』のほうをよく使っていたらしく、『つくる』が現れるごとに『作る』に改めるよう、メールの本文欄に修正希望を記していきました。すると、途中から『つくる』だらけになり、ほぼ丸まる1ページ分の文を、メール本文欄にコピー・アンド・ペーストして、修正希望の文を記していくことに。とほほ……」

いつしかこの著者は、メールの本文欄で「つくる」を「作る」に改める指示を記す作業だけに気もちを奪われ、ほかの確かめるべき誤字・脱字などを拾うことに集中できなくなってしまったといいます。

「10ページやったところで、この方法はあきらめました。PDFファイルを紙に印刷して、それを校正紙として赤ペンで朱入れしていく方法に切りかえました」

デジタルの文字群をコンピュータ上のメール本文欄やテキスト・エディタにコピー・アンド・ペーストして、修正希望を記すという方式での校正が効率的であるという場合は、そう多くないのかもしれません。

あるとすれば、もともと校正する記事がウェブニュースなどの電子媒体であるときや、あるいは本づくりの最後の段階で念のために校正刷を見ておくときぐらいかもしれません。そしてたいていは、「改める必要がある箇所は、そう多くないだろう」といった予想は外れるものです。

なお、PDF形式のファイルでは、アクロバットなどのソフトウェアを使えば、画面上の文字に対して「削除」や「文字挿入」などの「注釈」をつけていくことができます。この機能を積極的に使う人もいれば、見逃してしまうおそれがあるため使わうのに消極的である人もいるもよう。

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