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タケの拡大、その場で自然に、遠くには人為的に


日本のタケの主要な種となっているモウソウチク(孟宗竹)やマダケ(真竹)の北限はそれぞれ、北海道の函館、そして青森あたりとされます。

しかし、東北大学、長野県、森林総合研究所、気象庁、東京大学、環境研究所
、総合地球環境学研究所が2017年10月に共同発表した内容によると、地球が産業革命以前にくらべて4度、上昇した場合、北限は500キロメートル進んで稚内まで到達するということです。

モウソウチクは18世紀、マダケは10世紀より前に、ともに中国から入ってきた種とされます。日本で育成してきたほかの植物より繁殖力は高く、生育に適した場所が拡大すれば、いかにこれらのタケを管理するかを考えることがますます大切になっていきます。

さて、東北大学などの共同発表には、つぎのような文言があります。

「モウソウチクもマダケも種子から定着して竹林になった報告はなく、人が植えなければ新たな土地に定着することはないと考えられます」

かなり多くの人はつぎのように考えていたのではないでしょうか。つまり、人がかねてから里山を保つなか、タケに対してもそれなりに管理していたものの、近年は放置林が増えたため、繁殖力の高いタケは自然に任すまま、つぎつぎ新たな土地に定着していき、生育域を拡大していった、といったものです。

しかし、上の共同発表からすると、そうしたことは考えられないということになります。

タケも植物です。ほかの多くの草木とおなじように、開花して種子をみのらせます。しかし、マダケが花を咲かせるのは120年に一度、モウソウチクについては67年に一度とされ、めったに種子をみのらせることはありません。

しかし、タケは地下の茎をたくさん伸ばすことで、もともと1本だったタケが竹林にまで成長するといいます。つまり、おなじ場所におけるおなじ種のタケは、クローンであるわけです。

そのため、かつて人が里山で管理していたタケが放置されると、種子を介して新たな土地に定着することはほぼ考えられないものの、地下の茎はつぎつぎと生えていき、その場では拡大するといったことはありえそうです。

とはいえ、青森のタケが地下の茎を伸ばして函館でタケノコとして出てきたり、函館のタケが地下の茎を伸ばして稚内でタケノコとして出てくるようなことは考えられません。竹林は放っておいた場合、年に最大で拡大するのは3メートルから4メートルほどとのことです。

つまり、モウソウチクやマダケをなにもせずに放っておくと、その場所を専有はするものの、遠くの場所に定着していくことは考えにくい、といったことになりそうです。上の「年に最大3メートルから4メートル」の拡大率でいうと、10キロメートル離れたところまで拡大するには、2500年かかる計算となります。

上記の共同発表では、「温暖化がある程度進んでしまった場合にも、外来種被害予防三原則である、入れない・捨てない(管理放棄しない)・拡げない(タケを新たな土地に定着させない)といった管理と対策を、地域住民と行政が一体となって進めることが重要です」としています。

参考資料
東北大学 2017年10月18日発表「タケ、北日本で分布拡大のおそれ」
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2017/10/press20171016-01.html
国立環境研究所 侵入生物データベース「モウソウチク」
https://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/DB/detail/80740.html
academist Journal 2017年12月6日付 高野宏平、日比野研志、小黒芳生「外来種のモウソウチク・マダケが里山生態系を脅かす – 温暖化が進めば北日本でも分布拡大する可能性」
https://academist-cf.com/journal/?p=6586
農林水産省「特集1 竹のおはなし(2)」
http://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1301/spe1_02.html
鳥居厚志・奥田史郎「タケは里山の厄介者か?」
https://www.forestry.jp/publish/ForSci/BackNo/sk58/58.pdf
あれこれ それなりクラブ「竹の性質」
http://www2u.biglobe.ne.jp/~waroh/plants/take-2.htm
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