2018.04.05 Thursday
分析的に評価、そして総合的に評価

小学校、中学校、高校で学期末などに先生から教え子に渡される「通知表」には、A、B、Cでつけられる「観点別評価」または「観点」とよばれる項目と、3、2、1、あるいは5、4、3、2、1でつけられる「評定」とよばれる項目があります。
「評価」と「評定」ということばが使われているわけですが、どうちがうのでしょう。
国語辞典では、「評価」に対しては「品物の価格を決めること。また、その価格。ねぶみ」「事物や人物の、善悪・美醜などの価値を判断して決めること」「ある事物や人物について、その意義・価値を認めること」などとあります。
いっぽう「評定」に対しては「一定の基準に従って価値・価格・等級などを決めること」とあります。
このふたつからすると、「評価」は価値を決めたり認めたりすることであり、「評定」は価値を決めること、となります。
しかし、実際に文部科学省が定めている「評価」と「評定」の意味合いは、やや異なります。
文部科学省は、「観点別学習状況の評価」について「各教科の学習状況を分析的に評価するものであり、学習指導要領に示す目標に照らして、その実現状況を観点ごとにA、B、Cの3段階で評価するものです」としています。
つまり、「評価」の意味そのものについては「評価するもの」となっているわけです。「評価」をべつのことばで表現して説明するまではしていません。
いっぽう「評定」については、「観点別学習状況を基本として、各教科の学習状況を総括的に評価するものであり、小学校(第3学年以上)では3、2、1の3段階、中学校では5、4、3、2、1の5段階で評価するものです」としています。
つまり、「評定」の意味するところは「評価するもの」としています。
「観点別学習状況の評価」も「評定」も、どちらも「評価するもの」としているわけです。「評価」と「評定」の辞書的な意味のちがいと照らしあわせても、あまり意味をなさないことになります。
文部科学省の「観点別学習状況の評価」と「評定」説明のなかで、対比がなされているのは、前者を「分析的に評価するもの」とし、後者を「総括的に評価するもの」としているところです。
実際、通知表には、「観点」あるいは「観点別評価」の欄には、教科・科目ごとに3ないし5項目が設けられ細分化されているのに対して、「評定」は細分化されていません。
ウィキペディアの「評定」を説明するページでは「『様々な評価を総合して最終的に定めた値踏み』というニュアンスで理解するのが適当であろう」といった説明が冒頭にされています。ウィキペディアの情報は、さほど知識・情報源として高い価値はおかれていないものの、説明としては的を射ているのではないでしょうか。
「通知表」は、文部科学省によると「保護者に対して子どもの学習指導の状況を連絡し、家庭の理解や協力を求める目的で作成」されるもの。子どものことを保護者に伝えるための通知表に載っている「観点別評価」や「評定」の意味を、どれだけの保護者が理解しているかは定かではありません。「だいたいこんなものだろう」という理解はそれなりにあるのでしょう。
参考資料
デジタル大辞泉「評価」
https://dictionary.goo.ne.jp/jn/187670/meaning/m0u/評価/
デジタル大辞泉「評定」
https://dictionary.goo.ne.jp/jn/187994/meaning/m0u/評定/
文部科学省「学習指導要領について」
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakuryoku/faq/001.htm
文部科学省「学習指導要領・指導要録・評価規準・通知表について」
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/siryo/07070908/004/001.htm