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「そうなんですか系」「そうなんですね系」より「そうなんですよ系」が強烈

写真作者:Yamaguchi Yoshiaki

外国の人が日本語を習って使うとき、相づちの打ちかたに苦労するようです。

たとえば、相手がはじめて示す情報に対する相づちの打ちかたとして、「そうなんですか」や「そうなんですね」などがあります。では、「そうなんですか」と「そうなんですね」はどうちがうのでしょうか。

たとえば、お盆休み後にはじめて職場で対話した、日本人の社員と外国人の同僚が、つぎのような会話をしているとします。

日本人「私、お盆休みに沖永良部島っていう島まで遊びに行ってきたんです」
外国人「そうなんですか」

ここでの「そうなんですか」には、相手が沖永良部島にいったという話に対して、関心や驚きをもって受けとめながら、相手が言ったことを追って確かめていく、といったはたらきがあります。

また、「そうなんですか」と相づちをうった人は、相手の言っている沖永良部島という島のことを知っているかもしれないし、あるいは知らないかもしれません。知っていても知らなくても、「そうなんですか」と言うことにより、島の話をふくめて相手の話を聞こうとする姿勢も示されるので、会話の流れは自然なものといえます。

いっぽう、つぎの対話例はどうでしょう。

日本人「私、お盆休みに沖永良部島っていう島まで遊びに行ってきたんです」
外国人「そうなんですね」

さきの「そうなんですか」とにています。しかし、「そうなんですか」だと確かめたり問うたりする度合が高くなると感じる人は、その度合を減らせる「そうなんですね」を使う傾向にあるようです。

かつて、この相づちに違和感をもつ人が多かったといいます。「そうなんですね」には、相手が示す情報を自分は知っているという条件が生じるはずなので、初めて聞く話に「そうなんですね」を使うのはおかしい、というのが理由です。

たとえば、沖永良部島という島のことを初めて耳にするこの外国人が、「そうなんですね」と相づちを打っていると、おかしなことになります。会話のつづきで「お、ジェフさん、沖永良部島、知ってるんだ」と聞かれて、「いえ、初めて聞きます」と答えれば、いまの「そうなんですね」はなんだったのかとなります。

近年では、初めて聞く相手の話に「そうなんですね」が使われても違和感を覚えない人は増え、よく使われる相槌になったとされます。強い語調の「そうなんですか」より、抑えめな語調の「そうなんですね」を使いたがる人が増えているのかもしれません。

では、つぎの会話例はどうでしょう……。

日本人「私、お盆休みに沖永良部島っていう島まで遊びに行ってきたんです」
外国人「そうなんですよ」

沖永良部島に行ったという話を切りだしたこの日本人は、ぎょっとするかもしれません。「そうなんですよって……。おまえはおれなのか」と。

ここでの「よ」には、自分は知っている情報であることを、相手に示すはたらきがあります。たとえば、「あの喫茶店は夜中の2時までやっているよ」と言えば、「あの喫茶店は夜中の2時までやっています」より、自分の知っている情報を相手に示すという度が強くなります。

相手が沖永良部島に行ってきたという話に対して、「そうなんですよ」と答えた場合、「自分はあなたがお盆休みに沖永良部島で遊んでいたことを知っている」という前提が生じます。沖永良部島での行動をすべて把握されていたかのようなことになり、ぎょっとされてしまうわけです。「おまえはおれなのか」と。

相づちを「そうなんですか」と打つか、「そうなんですね」と打つか、「そうなんですよ」と打つか。対話としてふさわしいものがあるということはべつにして、人のなかには「そうなんですか系」「そうなんですね系」「そうなんですよ系」がいることが、うすうす感じられます。

「そうなんですか系」は、相手に対する関心が強く、相手の話を聞こうとする性格の人といえそうです。また、「そうなんですね系」は、相手に対する同意の心が強く、相手の話に合わせようとする性格の人といえそうです。

しかるに、「そうなんですよ系」は、相手に対する征服度が強く、相手の話をすべて知っているものとする性格の人といえそうです。そして、上の対話例のように、ホラーの要素もすこしふくまれます。「そうなんですよ系」が、周囲の人びとにかなり強烈な印象をあたえることでしょう。

参考資料
NHKラジオ深夜便 2017年7月18日放送「気になる日本語」
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