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「けんきゅうじょ」か「けんきゅうしょ」か、考えはじめると厄介

埼玉県和光市にある理化学研究所(りかがくけんきゅうしょ)
画像:Google Earth

日本には名の一部に「研究所」とつく機関が複数あります。国立研究開発法人とよばれる法人格の「研究所」もあれば、株式会社の「研究所」もあります。また、大学などの法人の下部組織としての「研究所」もあります。

これらの「研究所」につとめている広報の担当者たちは、自分の組織をどのように発音するでしょう。

「研究所」の「所」という字には、発音の「ゆれ」があります。つまり「けんきゅーじょ」と発音する人もいれば、「けんきゅーしょ」と発音する人もいます。そして、この「ゆれ」の傾向は、現実社会の「研究所」のよびかたにも反映されているもよう。「けんきゅーじょ」とよぶのが正しい機関もあれば、「けんきゅーしょ」とよぶのが正しい機関もあるわけです。

たとえば、茨城県つくば市にある、農業・食品産業技術総合研究機構の研究所のひとつ「果樹研究所」は、ウィキペディアの表記では「かじゅけんきゅうじょ」と表記されています。いっぽう、おなじく、つくば市にある同研究機構の研究所のひとつ「花き研究所」は、ウィキペディアでは「かきけんきゅうしょ」と表記されています。公式な情報とはいえませんが、同機構内の研究所で「じょ」と「しょ」の表記があるわけです。

「理化学研究所」は、「理研について」というサイトで「りかがくけんきゅうしょ」とひらがな表記しています。

ところが、辞書や事典の数々を見てみると「りかがくけんきゅうじょ」とあります。ブリタニカ国際大百科事典、デジタル大辞泉、百科事典マイペディア、世界大百科事典 第2版、大辞林 第三版、日本大百科全書では、いずれも「りかがくけんきゅうじょ」。同研究所自体の表記とは異なっています。

このことについて、理化学研究所の広報担当者が、国語辞典を発行する出版社に「けんきゅうしょ」で表記を願う旨を伝えたところ、「研究所」ということばは「けんきゅうじょ」と表記しているため、理化学研究所も「りかがくけんきゅうじょ」と表記しているという回答を受けたそうです。

「理化学研究所は固有名詞なのだから『けんきゅうしょ』で願いたい」とあらためて要請したものの、にべもなかったという話です。

日経新聞記事審査部は、こんなツイートをしています。

「理化学研究所は「リカガクケンキュウジョ」だと思っていましたが、テレビでは「ケンキュウショ」と濁らない読み方をしていることに気付きました。紙面上で漢字の読みが問題となる場面は限られますが、放送の世界では当然、どう読むかが常に問題となるのでしょう。苦労もひとしおでしょうね」

国立国語研究所の調査では、「研究所」をどう発音するかについて、採るかたちとして「けんきゅーじょ」が多数で、55〜79パーセントとなり、「言いやすい」40パーセント、「一般的」35パーセント、「語感がよい」25パーセントなどが理由として数えられたそうです。ちなみに、国立国語研究所は「けんきゅうしょ」のほう。

その研究所は「けんきゅうじょ」か、「けんきゅうしょ」か。きちんと発音をしようなどと考えはじめると、非常に厄介なことになりそうです。

参考資料
コトバンク「理化学研究所」
https://kotobank.jp/word/理化学研究所-148414
農林水産省「農林水産省で開発された農産物の品種はどのくらいありますか」
http://www.maff.go.jp/j/heya/kodomo_sodan/0505/01.html
ウィキペディア「果樹研究所」
https://ja.wikipedia.org/wiki/果樹研究所
ウィキペディア「花き研究所」
https://ja.wikipedia.org/wiki/花き研究所
理化学研究所「理研について」
http://www.riken.jp/about/
日経新聞 記事審査部(校閲担当)2014年4月10日ツイート
https://twitter.com/nikkei_kotoba/status/454281648264060928
文化庁「語形の『ゆれ』の問題 発音の『ゆれ』について(報告)3」
http://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/sisaku/joho/joho/kakuki/05/bukai02/09.html
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