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「工学寮」が日本の工学はじまりの場所――工学を知る(3)

山尾庸三らによる建議により、明治政府の省庁のひとつである工部省には1871(明治4)年、日本人が工学の技術や知識を身につけるための教育機関「工学寮」が置かれました。なお、山尾は工学寮の責任者にも就きました。そして、1877(明治10)年には、工学寮は「工部大学校」と改称されました。


工部大学校

工学寮時代から工部大学校時代にかけて、日本人を教える教師の一人として招かれた外国人のひとりが、ウイリアム・エドワード・エアトン(1847-1908)です。

エアトンは1873(明治6)年、工学寮の教師に就くと、電信科などで教えを施しました。なお工学寮の当初の学科には、土木、機械、電信、造家、採鉱、実用化学の6科がありました。また、工部大学校では当初、土木、機械、電信、造家、鉱山、化学、冶金の7学科がありました。

エアトンは、実験などの実践的な内容に重きをおいて教えを授けたとされています。電信科の第1期生の教え子たちは20人強。なかでも、志田林三郎(1855-1892)は、もともと数学などの成績に長けており、電信科では首席となりました。志田は1879(明治12)年、工部大学校を卒業し、英国のグラスゴーへ留学。エアトンにとっての師でもあったロード・ケルヴィン(1824-1907)に師事し、当地でさらに数学や物理学を学びました。

そして帰国後、志田は今度は指導者として、工部大学校の教授となったのでした。工学を学んだ者が、次世代の人たちに工学を教えるという、知の還元の原型がここに見られます。

なお、志田は1888(明治21)年、東京でおこなわれた電気学会の第1回総会で、「電気通信の未来予測」という題で講演し、「一本の電線により毎分数百語の速度で同時に複数の音声を送受信する時代が来るであろう」「数百里離れた場所で演じられる歌や音楽を、東京に居ながらにして楽しむ日がくるであろう」などと、計9つの技術革新の予想を示しました。この演説は「伝説」と讃えられています。しかし、1892(明治25)年、志田は突然に体力が衰えて、かえらぬ人となりました。

この間の1886(明治19)年、工部大学校は東京大学工芸学部と合併し、帝国大学工科大学になりました。このときには、土木工学、造家学、機械工学、造船学、電気工学、採鉱及冶金学、応用化学の7学科がありました。

さらに、1919(大正8)年、東京帝国大学工学部となりました。また、この年、京都帝国大学(いまの京都大学)、東北帝国大学(いまの東北大学)、九州帝国大学(いまの九州大学)にも「工学部」が設置されています。

こうして、日本で始まった「工学を教え、学ぶ」という営みは、国内の大学で展開されていきました。その延長線上の先端に、いまの大学における工学部や、大学院における工学研究科が存在していることになります。了。

参考資料
ブリタニカ国際大百科事「工学寮」
https://kotobank.jp/word/工学寮-61613
世界大百科事典第2版「工部大学校」
https://kotobank.jp/word/工部大学校-497306
「工学寮電信科から生まれた日本の電気」『東京大学工学部 ENGINEERING POWER』
ウィキペディア「工学部」
https://ja.wikipedia.org/wiki/工学部
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