科学技術のアネクドート

<< 「要石」の存在のような種も、「傘」の存在のような種も | main | 新しい学習指導要領、理数教科では国際水準を意識、反復学習も >>
本にちなんだ講演、「本の内容のまま述べる」は避けるべき


著名人が講演会で登壇するとき、やはり「知られている人だから」という理由で依頼がくるのでしょう。知られている人は、知られているなりの業績を残したり、マス媒体によく露出していたり、説明のしかたが上手だったりするものです。

いっぽう、無名な人であってもごくまれに、講演を依頼されて登壇することがあるようです。その経緯には、「出した本がそこそこ売れるなどして話題をよんだから」といったものがあります。そこで、無名な登壇者は、本に書いたことと関連づけて講演をすることになります。

このとき、講演のやり方には大きくふたつに分けることができるようです。ひとつは、本に書いてある内容とおなじ内容を述べるというもの。もうひとつは、本に書いてある内容から発展させた内容を述べるというもの。

どちらも、本に書いたことにかかわっているという点ではおなじです。しかし、「どんな聴衆に向けて講演をするか」という点で、この二つは大きく異なります。

本に書いてある内容とおなじ内容を講演で述べるのは、明らかに「聴衆が本をまだ読んでいない」ことを前提にした行為といえましょう。この場合、本をすでに読んできた聴衆にとっては、新しい話を得ることはできません。

いっぽう、本に書いてある内容から発展させた内容を述べるのは、「聴衆が本をすでに読んでいる」ことを前提にした行為といえます。この場合、本をまだ読んでいない聴衆にとっては、やや理解しづらい話を聴くことにはなりそうです。

本に書いた内容にかかわる主題の講演では、実際、すでに本を読んできた聴衆と、まだ本を読んでいない聴衆が混ざっていることが多くあります。どう対処すればよいでしょうか。

もし、本に書いてある内容とおなじ内容を講演で述べるのであれば、すくなくとも告知などに、「講演者は本と同様の内容を講演する予定です」などと記しておくべきです。講演会では、3万円や5万円などの高額の聴講料を課す場合もあります。本を読んだうえで高いお金を払って講演を聴きにいったら、本とおなじ内容が話されていたというのでは、もったいない買いものとなってしまいます。

本当のところ、講演者は、本に書いてある内容から発展させた内容を講演会では述べるべきなのでしょう。本をまだ読んでいない人が、発展的な話をされて内容をまったく理解できないかといったら、どうにかなることもあります。

また講演者が「本のなかで私はこういう話をしたんですが……」といった説明をていねいにすれば、まだ本を読んでいない人も、「だいたいこういうことね」と理解はできるはず。

聴講者たちの「最大多数の最大幸福」を考えた場合、本と同じ話をされたときのがっかり感はとても大きいものとなりますから、講演の内容は本で書いた内容そのものとは異なるものとすべきです。告知に「本を読んでいただいた方に向けてお話します」などと加えれば、さらに親切でしょう。
| - | 18:41 | comments(0) | trackbacks(0)
スポンサーサイト
| - | 18:41 | - | -
コメント
コメントする









この記事のトラックバックURL
http://sci-tech.jugem.jp/trackback/4199
トラックバック
CALENDAR
S M T W T F S
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031     
<< July 2017 >>
SPONSORED LINKS
RECOMMEND
フェルマーの最終定理―ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで
フェルマーの最終定理―ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで (JUGEMレビュー »)
サイモン シン, Simon Singh, 青木 薫
数学の大難問「フェルマーの最終定理」が世に出されてから解決にいたるまでの350年。数々の数学者の激闘を追ったノンフィクション。
SELECTED ENTRIES
ARCHIVES
RECENT COMMENT
RECENT TRACKBACK
amazon.co.jp
Billboard by Google
モバイル
qrcode
PROFILE