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国税庁の相談窓口によると、文筆業は「第五種事業」


3月は「確定申告」の時期。自由業などの申告納税者が収める税の額などを定めるため、納税者みずからが前の年の所得額や控除額を税務署に申告します。

過去のある一定時期の売りあげ高によっては、所得税のほかに消費税の確定申告をしなければならない人もいます。

この消費税の確定申告では、文筆業を生業とする人たちがすこし迷うことがあるといいます。いくつかあって選ばなければならない「事業区分」をどれにすべきかという迷いです。

この事業区分を決める必要があるのは、簡易課税制度というしくみで確定申告の書類をつくろうとする場合。消費税の確定申告のためには本来、仕事上の経費を計算して記さなければなりませんが、細々と計算するのがたいへんという人は、簡易課税制度を選ぶことができます。

収める消費税の額は、売りあげの額から仕入れなどにかかる額が差しひかれてきまりますが、簡易課税制度ではその仕入れの額を決めるとき「みなし仕入率」という率が使われます。「この仕事をしている人は、売りあげ額に対して、まあ、仕入れ額はこのぐらいになるでしょう」と見なして、売りあげ額に対する仕入れ額の率を一定にするのです。

「この仕事をしている人は」というときの「この仕事」というのには、第一種から第六種まであり、その種類によって、みなし仕入率が変わってきます。

たとえば、卸売業にあたる「第一種事業」だと、みなし仕入率は90パーセント。いっぽう、不動産業にあたる「第六種事業」だと、率は40パーセント。仕事の種類によって2倍以上のちがいとなります。

文筆業が当てはまりそうな事業には、「第三種事業」「第四種事業」「第五種事業」があります。

国税庁の説明によると、第三種事業は「農業、林業、漁業、鉱業、建設業、製造業(製造小売業を含みます。)、電気業、ガス業、熱供給業及び水道業」。「原稿をつくって出版社に売る」と考えれば、製造小売業にかすりそうなものです。

第四種事業はというと「第一種事業、第二種事業、第三種事業、第五種事業及び第六種事業以外の事業をいい、具体的には、飲食店業など」とあります。ほかの種類にはどれも当てはまらない仕事ということです。

第五種事業はというと「運輸通信業、金融・保険業、サービス業(飲食店業に該当する事業を除きます。)をいい、第一種事業から第三種事業までの事業に該当する事業を除きます」とあります。文筆業が、非物質的な生産物、つまりサービスを生みだす仕事であると考えれば、サービス業といえそうです。

あるもの書きは、自分がどの種類の事業に当てはまるのか迷い、国税庁の「税についての相談窓口」に問いあわせたといいます。

もの書き「自分は文筆業をしていますが、第一種から第六種までのどれに当てはまるのかわからなくてお尋ねします」

相談窓口「文筆業ですね。調べますから、ちょっとお待ちくださいね。……どうやら、『第五種事業』のようですね」

もの書き「サービス業ということでしょうか」

相談窓口「第五種事業以外のどれにも当てはまらなかったので、第五種事業となります」

こうして、このもの書きは、文筆業は第五種事業であるということを教えられたのでした。ちなみに、第五種事業のみなし仕入率は、6種類のなかで下から2番目に低い50パーセントとなっています。

参考資料
国税庁「簡易課税制度」
https://www.nta.go.jp/taxanswer/shohi/6505.htm
国税庁「簡易課税制度の事業区分」
https://www.nta.go.jp/taxanswer/shohi/6509.htm
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