写真作者:Yasuhiko Ito
ユーチューブなどの動画サイトでは、過去の報道映像を見ることができます。1日前や1年前のニュースもさることながら、戦後から昭和30年代にかけてのモノクロの映像も多く見られます。テレビの黎明期のニュースやドキュメンタリー番組のほか、映画館などで本作上映前に流された「ニュース映画」などの映像も残っているわけです。
半世紀以上前の報道映像では、アナウンサーの「声の質」がどれもおなじように感じられます。もちろん、声の主が男性か女性かぐらいは区別できますが、あたかもおなじ男性が、またはおなじ女性が話しているように感じられるわけです。
たとえば、男性アナウンサーの声については、「昭和28年(1953年)のニュース」という動画と、1955(昭和30)年の「朝日ニュース 日本の道」という動画を聴きくらべてみます。声の主がちがう人物であるのは明らかではあるのですが、それでもどことなくにたような声に感じられます。
声の質がよりにているのは女性のほうでしょうか。たとえば、1956(昭和31)年の「住宅」という報道映像と、1968(昭和33)年の「毎日ニュース マンガブーム」という映像を聴きくらべてみます。女性アナウンサーの声がかなりにています。
昔の報道映像のアナウンサーの声がにているという指摘や疑問は、インターネットでもよく話題にされていて、「似ていない」「そんなことはない」といった否定的な意見はあまり見られません。
では、声がにている理由はなんなのか。人びとの推測などから、いくつからの理由が考えられそうです。
まず、昔のアナウンサーは、高い声で明瞭に話すことを求められていたのではないかというものです。マイクロフォンの性能がいまほど高くなかったため、だれもが聞きやすい「ニュース読み」として、甲高い声で明瞭に話すことが必要だったという説です。実際、いまの放送での「ニュース読み」にくらべると、昔のアナウンサーの声は男女とも高い傾向があります。原稿を読む速度がゆっくりだったことは、明瞭さとかかわっているでしょう。
また、べつの理由として、昔の日本人の体格のせいだとする推測もあります。体重も身長もいまより小さかった昔の日本人は、高い声になりがちだったというわけです。たしかに、からだの大きな人のほうが声は低く、小さな人のほうが声は高いという傾向はあるようです。
より大きな理由として、いまの人びとが「昔のアナウンサーはいまと異なる話しかたをしている」という大きな括りで、昔の報道映像に接しているということもあるのではないでしょうか。これは、昔のアナウンサーや映像に原因があるのでなく、むしろ昔の報道映像を見聞きしている現代人の側に原因があるといえます。
これとにた理由ですが、いまの人びとが「昔の映像に乗って流れる音声といえばこんな感じ」という先入観をもっているのかもしれません。モノクロの暗めの映像に乗って不気味な交響曲が効果音として流れ、それが止むと甲高い声のナレーションが入る。こうした「昭和20〜30年代ニュース映像イデア」を、いまの人びとは自分たちのなかでつくりあげているというわけです。「昭和20〜30年代ニュース映像イデア」をもって当時の報道映像に接する人は、アナウンサーの声を「やっぱりこの声の質だ」と、ひとつの枠のなかに入れてしまうのかもしれません。
昭和20年代や30年代のニュース映像の声の質にくらべると、いまのニュースのほうが多様性があるように感じられはします。しかし、それも、50年後の人びとからしてみれば「50年前の平成時代のニュース映像を見ると、みな声の質がおなじように聴こえる」と感じられるのかもしれません。
参考資料
Yahoo!知恵袋「昔(戦前など)の映像を見ていると……」
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1447469859
Yahoo!知恵袋「昭和40年代の映画を見ていると……」
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1344784573
2016.06.14 Tuesday
昔の映像のアナウンサーの声がおなじに感じられる
| - | 18:26 | comments(2) | -
コメント
一本目の動画、リンク切れしてますね…
| 通りすがり | 2020/05/11 10:28 AM |
通りすがりさん、ご指摘ありがとうございます。
ユーチューブのリンクが切れていたので、おなじタイトル・内容で別媒体に紹介されているニコニコ動画のリンクを貼りました。
漆原。
ユーチューブのリンクが切れていたので、おなじタイトル・内容で別媒体に紹介されているニコニコ動画のリンクを貼りました。
漆原。
| 漆原 | 2020/05/11 2:46 PM |
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