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捺染に印刷技術を応用

写真作者:akaitori

その業界に携わる人であれば当然のことかもしれませんが、伝統的な技法で作られている印象の強いものでも機械化やデジタル化が進んでいる場合があります。

繊維を染料で染める染色法のひとつに「捺染(なっせん)」があります。染着性をもつ染料を、捺染糊とよばれる糊に混ぜてペースト状にし、これを繊維に押し当てて染める方法です。

捺染の歴史は紀元前2000年ごろの欧州さかのぼることができるとされています。日本では、京都などでの友禅染めや、沖縄でのかりゆしなどに、この捺染が伝統的に使われてきました。

もちろん昔は「手捺染」といって、手作業による捺染しかありませんでした。しかし、染物業にも、やはり効率よく機械で捺染をするという需要はあります。捺染にも機械化がなされてきました。それは、おもに紙の印刷法を応用したものです。

まず、「スクリーン捺染機」という機械が登場しました。これはスクリーン印刷という紙の印刷法を応用して、捺染を機械化したもの。スクリーン印刷は、金属の枠に張った絹などを版材として染料を定着させる印刷法です。

1920年代には、世界的に手捺染にかわり、ローラーを使った捺染機が工業生産での主流となり、さらに1930年代には、自動フラットスクリーン捺染機という自動化された機械も誕生しました。

しかし、捺染機では、版材全体に捺染糊を伸ばしてから繊維に染めるため、不要な捺染糊も生じてしまいます。

これに対して、新しく現れたのが「インクジェット捺染機」とよばれる機械です。これも、紙の印刷方式のひとつである「インクジェット」という方法を応用したもの。インクジェット印刷は、液状のインク粒子を対象の紙に飛ばして点を描き、その総体として文字や模様を印刷するというもの。

インクジェット捺染機は、1974年、カーペットの捺染用として米国で発表されたのが始まりとされています。衣料用の捺染としては、1989年にセーレンという会社が「VUCOTEX」というシステムを発表しました。

現在では、コニカミノルタやエプソンなどの、印刷技術に長けた企業は、デジタル・インクジェット印刷の応用として、インクジェット捺染機を開発しています。

当然ながら、手捺染のほうが手間がかかるため値段は高めに。一方、インクジェット捺染などの機械による方式は、無駄な染料を使わず効率よく捺染することができるため、手頃な値段設定や低環境負荷などに貢献しています。

参考資料
北尾好隆「デジタルプリントシステム」『繊維と工業』2004年11月号
https://www.jstage.jst.go.jp/article/fiber/60/11/60_11_P_530/_pdf
日本染色協会「スクリーン捺染の原点は日本説 作業向上化はリヨン、染型技術はドイツで発展」
http://www.nissenkyo.or.jp/history/page14.html
特許庁「染色加工技術」
https://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/map/ippan02/1/1-3.htm
コニカミノルタ「省資源化の取り組み」
http://www.konicaminolta.jp/about/csr/environment/recycle/saving_resource.html
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