科学技術のアネクドート

<< 若田さん、船長就任式でも「和」を強調 | main | 地名はあるが、そこに土地がない >>
本は人が送りたがる製品


人が物をつくったとき、ただその物が人に買われることを願うだけでなく、物をつくったことを知らせようとすることがあります。

その向きは、本という分野で著しくあります。著者が本を出すにあたり、その本を知人や雑誌出版社の編集者などに送って、本が出たことを伝えるのです。

この行為にはたいてい、「ほかの人に紹介してください」とか「雑誌の読書欄に書評を掲載してください」といった伝え広めるねらいがふくまれます。その本が出版されるという情報が広まれば広まるほど、より多くの人に本のことを知ってもらえるからです。なるべく新鮮な情報として伝えるため、本屋に並ぶよりも前の段階で、雑誌出版社などに本を送るという行為もひんぱんに見られます。

なにかを企画して、それをものとして実現させるという工程は、著者における本づくりだけがあてはまるのではもちろんありません。ほかにも、世の中にはあまたあります。たとえば、電子機器メーカーの開発者は腕時計をつくりますし、食品メーカーの開発者はカップ麺をつくります。

もちろん、「この腕時計、ほかの人に紹介してください」と知人に腕時計を送ったり、「雑誌の新製品紹介欄で紹介してください」とカップ麺を雑誌出版社の編集者に送ったりする機会もそれぞれあるでしょう。しかし、本を送る機会ほどは多くないのではないでしょうか。

もしそうだとすると、なぜ著者は製品としての本を送りたがるのでしょう。

本は印刷や製品にかかる費用が安く、多くを送っても出版社または著者の損にあまりならないという、費用対効果的な理由はあるでしょうか。しかし、本づくりにかかる費用より安い製品はいくらでもありそうです。カップ麺はその例です。なので、これがただひとつの理由にはなりません。

本の大半は文字情報でできているし、雑誌記事の大半も文字情報でできているので、媒体としての親和性は高いといえます。それが、本が送られやすいことと関係しているのかもしれません。出版社の編集者は、腕時計好きかどうかはわからないが、本好きという職業上の印象もありそうです。

これらの理由とはべつに、本を書く人は、ほかの製品を開発する人より、自分のことや自分のやったことを人に知ってほしがるという理由については、検討の価値がありそうです。著者の本分は、世の中に伝えたいことを伝えることだとすれば、より多くの人に自分の書いたことを伝えたくなり、つい知人や雑誌出版社などに本を送ることをしてしまう。こういった過程は描けそうです。

しかし、今日日、いちばん大きな理由は、できた本を送ることが習慣のひとつになっているからということかもしれません。出版業界ではあたりまえにやられていることなので、著者は意識することも、ほかの分野のことを考えることもなく、本ができたら本を送ろうとするわけです。

きょうも世の中では、送料以外は無料で本が飛びかいました。
| - | 23:53 | comments(0) | trackbacks(0)
コメント
コメントする









この記事のトラックバックURL
http://sci-tech.jugem.jp/trackback/3061
トラックバック
CALENDAR
S M T W T F S
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930     
<< April 2018 >>
SPONSORED LINKS
RECOMMEND
フェルマーの最終定理―ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで
フェルマーの最終定理―ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで (JUGEMレビュー »)
サイモン シン, Simon Singh, 青木 薫
数学の大難問「フェルマーの最終定理」が世に出されてから解決にいたるまでの350年。数々の数学者の激闘を追ったノンフィクション。
SELECTED ENTRIES
ARCHIVES
RECENT COMMENT
RECENT TRACKBACK
amazon.co.jp
Billboard by Google
モバイル
qrcode
PROFILE