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鼻も老化でおとろえる


人は齢をとると、すこしずつ感覚のはたらきが衰えていきます。人によって程度のちがいなどはありますが、40歳にもなれば、近くにあるものが見えにくくなります。老眼です。また、80歳にもなれば、耳が聴こえにくくなります。

眼や耳のおとろえは、よく聞きます。しかし、“鼻のおとろえ”というものはあまり聞きません。老化により、嗅覚のはたらきが衰えることはあるのでしょうか。

人の鼻の奥には、嗅細胞という細胞があります。この嗅細胞の表面に伸びた「におい分子受容体」とよばれる部分が、におい成分の分子を受けとめます。におい分子受容体に、におい成分の分子がかちっとはまると、「においを受けとった」という情報が脳に伝えられます。

においを感じる受け口ともいえる嗅細胞は、老化とともに減っていくことが動物実験によりわかっています。すると、鼻腔では、嗅細胞がある皮膚と、その近くにある呼吸に関係する皮膚との境目がわからなくなってきます。嗅細胞は、においの情報を脳へと伝える神経細胞であるため、これが減っていくと、嗅覚が衰えることが考えられます。

においを感じるまでの過程は、鼻腔の嗅細胞だけでなく、さらに先の神経細胞へと続いていきます。脳に至るまでの道筋に障害が起きても、嗅覚は衰えます。

老化によって人の嗅覚のはたらきが衰えることは、実際の臨床的な事例で報告されています。嗅細胞に障害が起きる末梢性嗅覚障害や、脳梗塞やアルツハイマー病などによって起きる中枢性嗅覚障害などがあります。

こうした、老化による鼻のはたらきの衰えがあまり話題にならないのは、眼や耳が悪くなることにくらべると、鼻が悪くなる度合がさほど深刻にはならないからともされています。

参考資料
健康長寿ネット「嗅覚障害 ニオイが感じられない、判別できない、鼻副鼻腔疾患」
http://www.tyojyu.or.jp/hp/page000000700/hpg000000642.htm
越智篤「Anosmia : Loss of Smell in the Elderly」(日本語)
http://www.h.u-tokyo.ac.jp/orl/internal/journal_club/24.2.21ochi.pdf
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