科学技術のアネクドート

<< インテルのロゴがパソコンCMでしばしば流れるワケ | main | 催し物参加の効用 >>
もうひとつの産学連携


「産学連携」は、安倍政権の掲げるイノベーション政策とも相まって、最近でもホットな言葉のひとつになっているようです。

朝日新聞の記事データベースで検索すると「産学連携」という言葉が使われていた記事は、2003年179個、2004年204個、2005年224個と、年々増えている模様。2006年も今日(10月23日)までに134個の記事でこの言葉が使われています。

産業の「産」と、大学の「学」が連携するから「産学連携」。

最近では新語辞書にも載っていて、「産業界と大学の連携により,学術研究に基礎づけられた産業の活性化を図り,競争力の向上,新産業の創出・育成をめざすこと」と定義されています。私のなかでは「大学側がもっている知的財産を産業側が活用して、社会に役立てていく」といったイメージがあります。

雑誌の執筆で産学連携の記事を担当したり、大学院の授業で産学連携についての講義を受けるまで、産学連携は興味はあるけれど、やや自分の生活とは縁遠い話だと思っていました。産学連携で生まれた工業製品をよく使っているわけでもないし…。

ところがある日のこと。私の仕事の経験を振り返ってみると、「これって、産学連携では」と思えることがあったのです。

それは何かというと、「本づくり」。

出版社で編集をしていたころ、大学の先生に原稿を書いてもらうことが何度もありました。産業側である出版社が、大学側の教員がもっている知識を活用することで、書籍という製品をつくり、社会に流通させるわけです。「発明」や「特許」は登場しないものの、教員の知識やアイディアが使われるわけであって、また執筆で生まれる著作権もりっぱな知的財産権の一つです。

ここで、ひとつ疑問に思ったことがありました。いま日本の産学連携では、教員が個人的に産学連携活動を進めることはまれで、TLO(技術移転機構)や産学連携本部など大学の機構が大学側の窓口となって、産業側とやりとりするのが基本です。

ところが編集者時代、大学の機構が窓口になって本づくりを進めただとか、印税のいくらかを大学に支払ったといった経験は一度もありませんでした。

別の日、産学連携業務に携わっている大学の担当教授に話を聞いてみると、やはり、本づくりも産学連携の一種類といえるそうです。

印税については、出版社と著者との間のこれまでの慣習が続いているようです。本づくりや印税については、大学の機構を通す必要がないということが、知的財産に関する学内統一見解で定められているそうです。

ただ、これはあくまでその先生の所属する大学での話。今後、財政が切迫した大学では、ひょっとすると「出版社との間をもつから、そのかわり印税の3%は産学連携本部がいただきます」などと言う大学が出てくるのかもしれません。
| - | 23:29 | comments(0) | trackbacks(1)
コメント
コメントする









この記事のトラックバックURL
トラックバック機能は終了しました。
トラックバック
-
管理者の承認待ちトラックバックです。
| - | 2007/07/01 9:41 PM |
CALENDAR
S M T W T F S
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31      
<< March 2024 >>
SPONSORED LINKS
RECOMMEND
フェルマーの最終定理―ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで
フェルマーの最終定理―ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで (JUGEMレビュー »)
サイモン シン, Simon Singh, 青木 薫
数学の大難問「フェルマーの最終定理」が世に出されてから解決にいたるまでの350年。数々の数学者の激闘を追ったノンフィクション。
SELECTED ENTRIES
ARCHIVES
RECENT COMMENT
RECENT TRACKBACK
amazon.co.jp
Billboard by Google
モバイル
qrcode
PROFILE