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「データ操作」でARBの信頼低下さらに
 京都府立医科大学は(2013年)7月11日(木)、「バルサルタン」(商品名は「ディオバン」)という高血圧治療薬の効き目を調べる臨床試験で、発表されていた6本の論文に「明らかなデータ操作」があったとする調査結果を発表しました。

論文の結論は、この薬は血圧を下げる効果はほかの薬と大差なかったが、脳卒中や狭心症のリスクが大幅に下がった、などといったものでした。

バルサルタンという薬は、高血圧治療薬のうち、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB:AngiotensinII Receptor Blocker)という種類に入る薬です。

生活習慣などが原因の高血圧に対しては、おもに、おしっこを多く出すことで血圧を下げる効果をねらう利尿薬と、体のなかの血管が狭まるのを抑えることで血圧を下げる効果をねらうレニン・アンジオテンシン系抑制薬があります。

ARBは後者のレニン・アンジオテンシン系抑制薬のほう。つぎのようなしくみで、血圧が高まるのを抑えるとされています。

体のなかで血管が狭まるしくみとして、腎臓でつくられたレニンという物質から、アンジオテンシンIというべつの物質がつくられ、さらにこのアンジオテンシンIがアンジオテンシンIIに変わり、このアンジオテンシンIIが血管を狭める、といったものがあります。

ARBは、アンジオテンシンIIのはたらきを抑えるといいます。アンジオテンシンIIは、受容体とよばれる体の部分にはまることにより血管を狭めます。しかし、この受容体にさきにARBが入り込むことで、アンジオテンシンIIが受容体に入るのを妨げるわけです。

高血圧治療薬のうち、ARBは製薬会社が巨額の開発費を投じてつくった“鳴りもの入り”の薬といわれてきました。巨額の開発費を投じたからには、それを回収しなければなりません。それをかなえるためには、患者を対象にした臨床試験で「この薬にはこれまでの薬にはない効き目がある」という結果を出さなければなりません。

これまでもARBをめぐっては、医師などのあいだで、すでに出ていた薬にくらべて、それほど効果はないのではないかといったことがささやかれてきました。

今回の「明らかなデータ操作」の背景には、「効き目があるようにしむけなければならない」といった事情があったと考えられてもしかたない面がありそうです。ARBという薬に対する信頼性や評価がまた下がったのはたしかなことでしょう。

参考文献
参考記事
読売新聞 2013年7月11日付「『薬論文で明らかなデータ操作』京都府立医科大」
| - | 23:59 | comments(0) | trackbacks(0)
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