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産業技術総合研究所と酸化チタン材料を共同開発、石原産業――リチウムイオン電池負極材のメーカー動向(13)


リチウムイオン電池の負極材を製造する各メーカーの動向を、プレスリリース、経営計画、報道などをもとに見ています。ここまでの12回は、おもに炭素を材料に負極材を製造する会社の紹介でした。

負極材の材料は、炭素以外にもあります。そこでここからは、おもに炭素材料以外を材料に負極材をつくっているメーカーの動向を見ていきます。

石原産業は、酸化チタンや酸化チタンなどを原料とする機能材料、農薬、医薬品、有機中間体、化粧品などを営業品目とするメーカーです。1920年、石原廣一郎がマレーシアのスリメダン鉱山を開発するため、大阪市に南洋鉱業公司を設立したのが沿革の端緒となっています。

1934年には、合資会社から株式会社に変更し、三重県に紀州鉱山を開設しました。1950年代からは三重県四日市市を中心に各種工場を建設し、1954年に硫酸法による酸化チタンの工場を完成させています。酸化チタンは、塗料や顔料などの着色剤のほか、光触媒や太陽電池にも使われている物質です。

石原産業が、まだ開発段階ながらリチウムイオン電池負極材として着目しているのも酸化チタンです。同社は酸化チタンを材料にした開発を産業技術総合研究所とともに進めてきました。

2010年10月の共同発表によると、酸化チタン負極材は、チタン酸リチウムと同程度の電圧をもつことから負極材料として高い安全性が期待され、さらにチタン酸リチウムに比べて高容量であることから、高いエネルギー密度の電池が得られるといいます。

このチタン酸化物は、化学組成を変化させる手法である「ソフト化学合成法」によって合成されます。チタン酸ナトリウムを出発原料とし、60度の条件下で酸処理を行い、水素、チタン、酸素の元素からなる前駆体をつくります。その後、200〜300℃程度の温度で加熱し、チタン酸化物をつくります。

このチタン酸化物を用いた重放電の実験では、10サイクルにわたり、ほぼ可逆的な充放電容量を達成することができたといいます。発表では「チタン酸リチウムと同等の良好なサイクル特性」としています。

この共同研究では、産業技術総合研究所が低温合成プロセスのひとつであるソフト化学合成法を適用したチタン酸化物の合成などの研究に取り組んでいました。そのなかで、チタン酸化物を見いだし、その合成方法とリチウムイオン二次電池電極材料への適用について検討を行っていました。

石原産業が負極材を実用化するまでの過程としては、電機メーカーなどにサンプル出荷を行い実用化への課題を抽出し、さらに化学組成、結晶構造、粉体特性の最適化などを進めていくと見られます。つづく。

参考記事
産業技術総合研究所・石原産業 2010年10月25日付「リチウムイオン二次電池用の新しい負極材料を開発 新規チタン酸化物で高容量化を実現」
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