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負極材のシェアリードし中国にも拠点、日立化成工業――リチウムイオン電池負極材のメーカー動向(2)


リチウムイオン電池用負極材料の世界市場では、日立化成工業、JFEホールディングス、日本カーボン、日立ケミカルホールディングズなどが高いシェアをもっています。

日立化成工業は、電子材料、無機材料、樹脂材料、配線板材料などの機能材料、また、自動車部品、電子部品などの先端部品・システムを主な事業内容とする企業です。

沿革については、1912年に日立製作所が油性ワニスの研究を開始したことが同社の創業とされています。日立化成工業としての設立は1962年。研究開発関連では、1973年に茨城県内に研究所を2か所、設立し、その後、再編などを経て2009年に、先端材料研究所及び新材料応用研究所を統合し、筑波総合研究所を発足させました。

リチウムイオン電池負極材を機能材料のカーボン製品・セラミックス事業の中に位置づけています。モーター用ブラシなどを開発により得たカーボン技術を活用し、リチウムイオン電池用負極材の開発・製造を進め、1998年度末に上市しました。

同社では製造する負極材を人造黒鉛としており、粒子内部に多数の細孔をもつ球塊状の構造を特長にしています。この構造により、高容量かつ放電負荷特性に優れたリチウムイオン電池を実現可能にするといいます。

2006年には、社員開発者がテクニカルレポートにおいて負極材の開発品の粉体物性などについて述べています。従来品では、高電極密度時に、粒子内細孔が多すぎると電極の圧縮加工時に粒子を破壊して、放充電特性を低下させる傾向がありますが、開発品では水銀圧入法により細孔容積を低減しており、電極充填性に影響するタップ密度の向上をはかったといいます。

特許については、日立化成工業は1995年から国内外でリチウムイオン電池用カーボン負極材の関連特許を出願し、2003年には複数の特許に対して異議申し立てがありましたが、係争の末、2006年2月に基本特許網を確立したことを発表しています。

開発関連では、2011年11月、同年9月末時点で58.26%を出資していた新神戸電機を株式公開買付により完全子会社化すると発表しました。新神戸電機は日立化成の株式公開買付に賛同の意を示しました。新神戸電機はリチウムイオン電池自体を製造しているが、完全子会社化により自社の負極材をはじめとする電池材料の開発速度を速められると判断したもよう。また、この完全子会社化を受けて、日立本体は産業用リチウムイオン電池事業を新神戸電機に移管しました。

生産体制では、山崎事業所・桜川(茨城県日立市)に民生用負極材の既存工場をもっていましたが、2010年4月に山崎事業所・勝田(茨城県勝田市)にエコカー向け負極材の第一ラインを、2011年1月に山崎事業所に第二ラインを稼働させました。

さらに2011年7月には、山崎事業所に第三ラインと第四ラインを増設し、生産量を倍増することも発表しました。第三・第四ラインの稼働開始は「2012年9月を目指す」としており、投資額は35億円。また、関連会社の日立粉末冶金香取事業所(千葉県多古町)では民生用の負極材を製造しています。

海外にも生産拠点を設けています。2011年6月、同社は事業拡大のため、中国煙台で負極材の生産拠点を新設することを発表しました。2006年に設立された日立化成工業煙台の敷地内に5億円を投じて新工場を設立。2012年4月に生産開始を発表しました。

2011年3月の東日本大震災では、日立化成の各工場も被災しました。民生向け負極材について、3月22日の週に生産を再開する見込みであることや、山崎事業所・桜川については 4月5日に生産出荷を再開したことなどを発表しています。つづく。

参考文献
石井義人、西田達也、須田聡一郎、小林学「高エネルギー密度対応リチウムイオン電池負極材」『日立化成テクニカルレポート No.47(2006-7)』
参考記事
日立化成ニュースリリース 2006年2月28日付「リチウムイオン電池用カーボン負極材に関する基本特許網確立」
日立化成ニュースリリース 2011年6月23日付「中国煙台にリチウムイオン電池用カーボン負極材の生産拠点を新設」
日立化成ニュースリリース 2012年4月25日付「中国煙台でリチウムイオン電池用カーボン負極材の生産開始」
日立化成ニュースリリース 2011年3月18日付「東北地方太平洋沖地震の影響について(第七報)」
日立化成ニュースリリース 2011年4月5日付「東日本大震災の影響について(第九報)」
日経産業新聞 2011年11月28日付「新神戸電機にTOB、日立化成、完全子会社化へ」
日本経済新聞 2011年11月26日付「日立、電池事業を再編、子会社に用途別集約、顧客ニーズに即時対応」
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