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ナノ粒子技術支えにリン酸鉄リチウム事業を拡大、住友大阪セメント――リチウムイオン電池正極材のメーカー動向(9)



リチウムイオン電池の正極材をつくるメーカーのうち、リン酸鉄リチウムを主要材料としている企業を紹介しています。住友大阪セメントも、その一社です。

住友大阪セメントは、セメント、光電子、鉱産品などの事業をおもにしている企業です。1907年に設立された磐城セメントがこの企業の源流にあります。また、もう一つの源流には1916年に大阪窯業のなかで発足したセメント部があります。この部門は後に大阪セメントになりました。そして、磐城セメントと大阪セメントが1994年10月に合併し、住友大阪セメントとなりました。

住友大阪セメントは、1980年代に培ったナノ粒子をつくる技術を活用して、リン酸鉄リチウムの製造法の開発をしてきました。ナノ粒子をつくる技術は、「水熱合成法」とよばれます。これは、原料となる溶液を密閉容器に入れ、高圧の水蒸気の条件で化合物を合成したり、結晶を成長させたりする技術。高い純度で単結晶のナノ粒子を得られ、高い導電性を実現できるとしています。

2007年12月に、千葉県船橋市の船橋事業所で1年に150トン規模の製造ができるリン酸鉄リチウムのパイロットプラントを稼働させ、実証実験をしてきました。2009年5月には、リン酸鉄リチウムでの事業化を推進していることを明らかにしました。用途としてあげられたのは、ハイブリッド自動車、電気自動車、太陽光発電装置での蓄電です。

2010年4月には、リチウムイオン電池の製造するエリーパワー製の大型リチウムイオン電池向けに、住友大阪セメント製のリン酸鉄リチウム正極材が採用されるなどして、神奈川県川崎市の川崎工場で量産体制に入りました。

さらに、住友大阪セメントは2011年1月、「電池性能を大幅に向上するリン酸鉄リチウム」を開発したと発表しました。ナノ粒子をつくる技術とナノ粒子の表面を修飾する技術を駆使して、リン酸鉄リチウム粒子の微細構造を制御することが可能となり、電子伝導性が高まったことなどを明らかにしています。

さらに事業拡大路線はつづきます。2011年6月、ベトナムのフンイエン省イエンミー地区タンロンII工業団地内に、100パーセント出資の子会社エスオーシーベトナムを立ち上げ、リン酸鉄リチウム正極材の事業拡大をはかることを発表しました。2013年に年2000トン規模で生産できる見込みをそのときに発表しています。また、年1万トン規模のまで拡張することも可能といいます。

住友大阪セメントは、リン酸鉄リチウムとはべつに、リン酸鉄マンガンリチウムの開発もしています。構造はリン酸鉄リチウムと同様であるため、リン酸鉄リチウムの製造設備で生産することもできます。2014年春ごろまでに実用化することを目指すとしています。つづく。

参考記事
住友大阪セメント 2009年5月28日「リチウムイオン電池用正極材『リン酸鉄リチウム』の事業化を推進」
住友大阪セメント 2011年1月11日「新規改良型『リン酸鉄リチウム』でリチウムイオン電池正極材の事業拡大を加速」
住友大阪セメント 2011年6月8日「リチウムイオン電池正極材料の本格的事業拡大 ベトナムでの新工場建設について」
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