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x成分の誤差はゼロ、y成分の誤差は無限大にあらず――不確定性原理の新展開(4)


2003年、小澤正直さんによりハイゼンベルクの不確定性原理を改める「小澤の不等式」が発表されました。

小澤の不等式で示されるのは、ウェルナー・ハイゼンベルクが言っていた「位置の測定誤差 × 運動量の測定誤差」は考えられていたよりも小さい値で済む場合もある、つまり、測定のときにかならず生じる誤差の量は、不確定性原理で考えられていたより小さい場合がありうるということです。

しかし、これは数式の世界で示されたこと。不確定性原理は、小さな物の位置や運動量を測るという、実際的な問題について述べられたものです。

そのため「不確定性原理には当てはまらない場合がある」ということを示すには、実際に実験で当てはまらないことがあることを示すのがなによりの証明となります。

この実験による証明にとりくんだのが、ウィーン工科大学原子核研究所准教授の長谷川裕司さんです。

長谷川さんは、実験によって「不確定性原理でいわれているほどの誤差は生じさせずに、ものの位置と運動量を測ることができる」ということを証明しようとしました。この実験に浸かったのが、素粒子という小さな粒の一種類である中性子です。

中性子は、自転する性質をもっていますが、この自転には「x成分」と「y成分」という、異なる二つの方向の成分成分があります。この「x成分」と「y成分」の関係は、不確定性原理でよくいわれる「位置」と「運動量」の関係とおなじと考えることができます。

つまり、x成分をについて正確に測ろうとすると、y成分が正確にはかれなくなり、y成分について正確に測ろうとするとx成分が正確に測れなくなる、といった関係があるわけです。

しかし、長谷川さんは、このx成分とy成分についての測定条件をいろいろと変えていきました。

ハイゼンベルクの不確定性原理があてはまらない例は、「x成分の誤差がかぎりなくゼロに近くなった状態」のときに訪れました。不確定性原理が正しければ、x成分の誤差がゼロにかぎりなく近づけば、y成分の誤差のほうはかぎりなく無限大に近づくはずです。ところが、このときのy成分の値は「無限大」でなく「1.5弱」だったといいます。

この結果により、ハイゼンベルクの不確定性原理が、かならずしもあてはまらない場合があるということが、実験により示されたのでした。つづく。

参考文献
名古屋大学「現代物理学の根幹である不確定性原理の破れを観測 ナノの世界の深淵を語る基本原理に穴」

参考記事
きょうの日経サイエンス 2012年1月16日付「ハイゼンベルクの 不確定性原理を破った! 小澤の不等式を実験実証」
| - | 23:58 | comments(0) | trackbacks(0)
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