2011.12.19 Monday
「お父さん」より54年早く、宇宙へ
ソフトバンクのコマーシャルでは、犬の姿をした「お父さん」が、宇宙飛行士の古川聡さんに「宇宙に初めて行ったのは犬ですから」と言われて一念発起し、宇宙へ旅立ちました。「お父さん」自身は“宇宙経験”に興奮ぎみのようです。
人間よりも早く宇宙に行ったのは犬などの動物でした。1957年11月3日には、「ライカ」とよばれるメスの犬が、ソ連の人工衛星スプートニク2号に載せられて宇宙へ。地球に生きる動物として初めて宇宙の周回軌道に乗ったといわれています。
当時、ソ連は米国とのあいだで、「人を宇宙に行かせる」ということを目的とした開発競争の只中でした。宇宙に人を行かせるという目標を達成するうえでの、一段階として犬を宇宙に行かせるということが起きたわけです。
スプートニク2号に乗せられた「ライカ」については、はじめから地球に帰還させる計画はありませんでした。つまり、宇宙のどこかで死を迎えることになっていたわけです。
ソ連の航空宇宙当局が伝えたところでは、ライカはスプートニク2号の発射後、1週間ほどは生きていて、その後、餌に薬をあたえて安楽死をさせたということになっていました。
しかし、ライカがいつ死んだかについては、その後、あらたな見解が出るようになりました。
1990年代後半には、ライカが乗せられていたかごの過熱で、うちあげ4日後には死んでいたという話が、ロシアの政府筋から出されました。
さらに、2002年10月には、モスクワ生医学研究所の生物学者で、スプートニク計画に関わっていたディミトリ・マラシェンコフが、米国での国際会議で重大発表をしました。スプートニク2号うちあげ後、ライカはパニック状態になり、数時間後には死んでいたというのです。
マラシェンコフが発表した論文では、発射直後、スプートニク2号は時速2万8800キロにも達し、ライカの拍動は通常の3倍にも達していました。これはライカが入っていたカプセルの過熱、怯え、そしてストレスによるものと考えられています。そして、5時間から7時間のうちに、ライカの生命兆候は見られなくなっていたといいます。
ライカは「お父さん」ほど、宇宙を満喫することはできなかったようです。その後、犬の宇宙飛行では、1960年8月19日、スプートニク5号に乗せられた「ベルカ」と「ストレルカ」という犬が、宇宙で周回軌道に乗ったあと、地球への帰還を果たしています。
「お父さん」は無事、“地球帰還”を果たせるでしょうか。「お父さん」も“宇宙旅行”ができる時代を迎えたのは、こうした犬を使った宇宙開発への試みの積み重ねがあってのことといえます。もっとも「お父さん」は犬ではないといいますが。
参考記事
Dogs in The News.com 2002年10月3日付 “Message from the First Dog in Space
Received 45 Years Too Late”