科学技術のアネクドート

<< 世界で48番目においしい飲みものは「容器入りの菌」 | main | 「マッチポイント逗子店」のチキンエッグカレーライス――カレーまみれのアネクドート(38) >>
書評『空のほほえみ』
変化する風景の数ほどに、それを表現することばというものはあるもの。そんな風景とことばの魅力がちりばめられた、空の写文集です。



空の表情はじつにさまざまだ。昼と夕方と夜とでは、染まる色が変わる。そして雲が絶えず空に現れてはかたちを変えていく。

そんな空の表情を「ほほえみ」というタイトルで集めたのが、この『空のほほえみ』という写文集だ。著者の高橋健司氏は、元気象庁職員の写真家。ベストセラーになった空の写真集『空の名前』を出したことでも知られる。

7月から始まり、各月5個から8個のテーマをもとに、随筆と空などの写真とが見開きで載っている。

たとえば、12月のテーマのひとつは「根雪近し」。「根雪」は、雪どけの季節までとけないで残る雪のこと。北国では根雪が降ろうとするころ、冬の虹が見られることが多いという。

「気圧配置が冬型になると、北風の造る積雲が流れてきて、通り雨を降らせるからだ。この雨を時雨という。雲は数分間で通り過ぎて雨は止む。すると陽が射して、鮮やかな虹が懸かるのだ」

豊富な気象の知識と語彙、それに美しい写真で展開されていく。部屋にいながらにして四季の移りかわりを味わうことができる贅沢な一冊だ。「行合の雲」「返り咲き」「羽雲」「季節の綱引き」「山笑う」など、美しい日本語の数々にも触れることができる。

著者は31年間、気象にかかわる仕事に携わってきた。仕事で役立ててきた歳時記の季語に、自分なりに視覚化をしてみようと思いたったことが、空の表情を撮るきっかけとなったという。

そしてこうも。「季語の数は多いので、視覚化しなければいけない自然現象は多く、まだまだ作業の終わりはみえない」。

長年にわたり空と向きあっている著者でさえ「終わりはみえない」という。それだけ、季節の表情はさまざまだといことだろう。これからも、空の表情を撮りつづけ、読者に伝えつづけてほしい。

『空のほほえみ』はこちらからどうぞ。
| - | 23:02 | comments(0) | trackbacks(0)
コメント
コメントする









この記事のトラックバックURL
トラックバック機能は終了しました。
トラックバック
CALENDAR
S M T W T F S
    123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031
<< October 2020 >>
SPONSORED LINKS
RECOMMEND
フェルマーの最終定理―ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで
フェルマーの最終定理―ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで (JUGEMレビュー »)
サイモン シン, Simon Singh, 青木 薫
数学の大難問「フェルマーの最終定理」が世に出されてから解決にいたるまでの350年。数々の数学者の激闘を追ったノンフィクション。
SELECTED ENTRIES
ARCHIVES
RECENT COMMENT
RECENT TRACKBACK
amazon.co.jp
Billboard by Google
モバイル
qrcode
PROFILE