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“PANDA”が光を通す(後)
「PANDAファイバ」のコアの経路の中には、「偏波モード」とよばれる波の伝わりかたのモードが、通常はふたつ、存在します。

コアのかたちが完全な円形であり、クラッドとコアの位置も完全に点対称になっていれば、このふたつの偏波モードは独立したまま長い距離、保たれることになります。

しかし、実際は、コアが微妙に楕円形になっていたり、クラッドとコアの位置が全体的にすこし右にずれていたりで、完全な対称にはなっていません。

すると、ふたつの偏波モードのあいだが、結びついてしまうなどしてしまいます。光を運ぶことにとって、ふたつの偏波モードの結合はよろしくないわけです。

そこで、ふたつの偏波モードを独立させたまま保つことはあきらめます。ぎゃくに、ふたつの偏波モードのちがいをより際だたせれば、ふたつの偏波モードは独立したままの状態を保てるようになります。

そこで、取り入れらたのが、コアのすこし外側に、ふたつの「応力付与部」つまり、パンダの眼縁を置くという方法ものでした。

ふたつの応力付与部を置くことにより、光と光にかかる力の関係に変化が生まれます。パンダの眼縁の間を走るコアの光は、応力付与部に対する方向(図の横方向)では引っぱられ気味になります。いっぽう、応力付与部のない方向(図の縦方向)には圧され気味になります。

こうなると、光が物質を通して二手にわかれる「複屈折」とよばれる現象が起きやすくなります。これにより、ふたつの偏波モードのちがいが、より際だつようになるのです。


複屈折の例

PANDAファイバを開発したのは、NTT R&Dフェローの岡本勝就さんや、同じくNTTの保坂敏人さん、それに茨城大学の佐々木豊さんら。岡本さんらが電電公社時代、茨城電気通信研究所に在籍していたころ、伝送状態をいかに良好に保つかを試行錯誤していた結果、このPANDAファイバの原型をうみだしたといいます。

パンダの顔のような「PANDAファイバ」とは話がうまくできています。じつは、もともと岡本さんら研究者のあいだでは、「パンダの顔に似ているね」ということから、研究開発段階でこのファイバを「パンダファイバ」とよんでいたとか。

その後、なんとかして“しかる名前”をつけるべく、岡本さんや佐々木さんが試行錯誤し、“Polarization-maintaining AND Absorption-reducing fiber”という名前を付けました。“Polarization-maintaining”は「偏波を保つ」、“Absorption-reducing”は「(損失をもたらす光の)吸収を抑える」という意味です。こうした略語による名前に“AND”を堂々と用いるとは、大胆な発想です。

「PANDAファイバ」は「パンダファイバ」の呼び名ありきだったわけです。しかし、それよりもまずは、光を良好に伝えようとする開発者の大志と技術ありきだったわけです。

参考文献
古河電工時報109号「偏波保持光ファイバ」
『ビジネスコミュニケーション』2005年6号「研究分野の世界の顔“NTT R&Dフェローに聞く”5」

参考ホームページ
symphotony.com「偏波保持ファイバーの構造と特徴」
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