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尺度の変更でマグニチュード「8.8」そして「9.0」へ


(2011年)3月11日に太平洋沖で起きた巨大地震では、地震の規模を示すマグニチュードについて、気象庁は「9.0」と発表しています。

このブログの3月11日(金)付の記事「日本の気象庁は『気象庁マグニチュード』を採用」で、「モーメントマグニチュードと似ていながら、若干異なるマグニチュードを日本の気象庁は使っています」と伝えました。

しかし、気象庁は3月13日(日)にマグニチュードを9.0とすると発表した資料「『平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震』について(第15報)」のなかで、「ここで示す地震の規模は、CMT解析によるモーメントマグニチュード(Mw)」と注釈をつけています。

「マグニチュード9.0」は、ふだん気象庁が採用してきた「気象庁マグニチュード」はあてはめず、べつの「モーメントマグニチュード」をあてはめたものであるということです。

なお、「CMT解析」とは、「セントロイド・モーメント・テンソル(Centroid Moment Tensor)解析」のことで、地震の位置、規模、発生のしくみを同時に求める方法のことです。

また、“Mw”の“M”は「マグニチュード」のこと。“w”は、“mechanical work accomplished”という用語の“work”からきたもの。この用語は、日本語に直訳すると「完遂された力学的仕事」となります。

「モーメントマグニチュード」は、世界的に広く使われている地震の尺度です。気象庁はホームページで以下のような説明をしています。

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地震は地下の岩盤がずれて起こるものです。この岩盤のずれの規模(ずれ動いた部分の面積×ずれた量×岩石の硬さ)をもとにして計算したマグニチュードを、モーメントマグニチュード(Mw)と言います。(中略)その値を求めるには高性能の地震計のデータを使った複雑な計算が必要なため、地震発生直後迅速に計算することや、規模の小さい地震で精度よく計算するのは困難です。
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規模の小さい地震で精度よく計算するのが困難だったため、気象庁は独自に開発した「気象庁マグニチュード」という尺度を使ってきました。しかし、今回の巨大地震では、尺度を「モーメントマグニチュード」にしたわけです。

気象庁は、今回の巨大地震について、直後に発表した7.9から、8.4へ、8.8へ、9.0へとマグニチュードを変更してきました。

このうち、8.4から8.8への変更のとき、「気象庁マグニチュード」から「モーメントマグニチュード」に変更されたようです。地震学者の島村英紀さんは、自身のホームページでつぎのように述べています。

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今回の大地震(東北地方太平洋沖地震)で気象庁が発表したマグニチュード9というのは、気象庁がそもそも「マグニチュードのものさし」を勝手に変えてしまったから、こんな「前代未聞」の数字になったものだ。

17時30分にマグニチュード8.4からマグニチュード8.8に変更された。このマグニチュード8.8は「モーメント・マグニチュード」の数値である。モーメント・マグニチュードは気象庁マグニチュードとは違い、「地震の震源で、どのくらい大きな地震断層が、どのくらいの長さで滑ったか」を解析して求めるマグニチュードだ。気象庁マグニチュードとは決定の原理が違う。気象庁マグニチュードではこのような大きな数値は出ない。
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気象庁が使ってきた「気象庁マグニチュード」は、小さな地震をすぐにはかるのには向いています。いっぽう、これほどの巨大な地震をはかるのには、向いていないようです。

あまり大きくは伝えられていませんが、マグニチュードが8台と9台では、行政や市民の受ける印象も大きく変わってきます。

参考文献
気象庁2011年3月13日発表「『平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震』について(第15報)」

参考ホームページ
気象庁「地震について」
島村英紀のホームページ「2011年3月21日に追記2。東日本を襲った巨大地震(東日本大震災。東北地方太平洋沖地震)で」
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