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日本の気象庁は「気象庁マグニチュード」を採用


東北地方の太平洋沖で、マグニチュード8.8の巨大地震が発生しました。今回の地震の大きさは、世界で20世紀以降に起きた大地震のなかでも、5番目に匹敵するとされています。

地震の大きさを示す値が「マグニチュード」。「大きな」という意味をもつ“mag”と、性質や状態をあらわす名詞をつくるための接尾辞“-itude”からきています。“mag”は、「最大限」を意味する“maximum”の“max”などの語源でもあります。

1930年、米国の地震学者チャールズ・リヒター(1900-1985)がマグニチュードの概念を考えました。

リヒターが考えた当時のマグニチュードは、「地震の波の振れ幅が10倍大きくなると、マグニチュードが1上がる」という単純なものでした。

しかし、その後、より地震の姿を正確につかもうという目的のもと、各国でさまざまなマグニチュードの計算方法が開発されていきました。

よく聞くのは「モーメントマグニチュード」。日本の地震学者・金森博雄などが考えました。地震は断層のずれで起きます。このモーメントマグニチュードは、「断層面積」と「断層すべりの量」の積に比例します。

いっぽう、モーメントマグニチュードと似ていながら、若干異なるマグニチュードを日本の気象庁は使っています。気象庁は「気象庁マグニチュード」とよび、“Mj”で示される場合があります。Mは「マグニチュード」のこと、jは「ジャパン」のこと。

気象庁マグニチュードは、2003年9月以前と、以降で内容が異なります。

モーメントマグニチュードはたしかに物理的な計算で測れる便利な値でした。しかし、小さな規模の地震では計測しづらいなどの難点もありました。

そこでまず、1970年代後半、気象庁は地震の速度をはかれる地震測定器を導入して、地面の動く速度から地震を測定する方法を開発しました。これで求められる「速度マグニチュード」を従来のモーメントマグニチュード類似値(変位マグニチュード)とあわせて計算するような方法で、マグニチュードを算出したのでした。これにより、小さな地震の大きさも早くきちんとはかれるようになりました。

その後、地震測定の技術が進んだことにより、速度マグニチュードとモーメントマグニチュード類似値をより正確にあわせることができるようになってきました。また、地震計や置き場の一新があり、モーメントマグニチュード類似値が小さく観測されてしまう場合もみられるようになりました。

そこで、2003年9月、気象庁は新しい気象庁マグニチュードを導入することになりました。

それまで、速度マグニチュードと、モーメントマグニチュード類似値の差が0.5以上あるときは後者を優先し、0.5以上の差がないときは両者の値の平均をとって「気象庁マグニチュード」としてきました。

2003年以降は、過去の経験値から、速度マグニチュードをモーメントマグニチュード類似値とよりよく一致させるような計算式を生みだしたのです。これが、気象庁発表のマグニチュードとして、いまも使われています。

マグニチュードの計算方法は複雑。そのため、「マグニチュードが1増えると地震の大きさは32倍になる」「マグニチュードが2増えると地震の大きさは1000倍になる」といった大まかの目安がいわれています。

今回の東北沖地震のマグニチュードは8.8。阪神大震災のときが7.3。この差から、「阪神大震災の100倍以上の大きさ」という表現も聞かれはじめています。

参考ホームページ
気象庁2003年9月17日「気象庁マグニチュード算出方法の改訂について」
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