科学技術のアネクドート

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室温で乗っけて曲がるディスプレイをつくる
 コンピュータやテレビの液晶画面には、薄膜トランジスタという素子が使われています。

「トランジスタ」は、液晶画面の点々をオンかオフかにスイッチングするためなどに使われる素子。これの頭に「薄膜」がつきます。つまり、薄膜トランジスタは、薄い膜のようなかたちをしたスイッチングのための素子だということがわかります。

たいてい、この薄膜トランジスタには、非晶質シリコンという材料が使われています。これは、シリコンという物質が、結晶ほどにはきちんと整列していない状態の材料です。

この非晶質シリコンに220度以上の熱をあたえて、平らな基板に乗せることで、「基板の上に薄膜トランジスタが乗っかっている」という状態をつくります。これが、いまのコンピュータやテレビなどの画面の肝の部分になっているわけです。

非晶質シリコンなどの薄膜を基板の上に乗せるには、220度以上の熱が要ります。とうぜん、基板のほうも、220度以上の熱に耐えられるものでなければなりません。そのため、ガラスの上に非結晶シリコンなどの薄膜は乗せられるけれど、プラスチックの上に乗せようとしてもプラスチックが溶けてしまうという課題がありました。

この課題を解決しうる材料が、「非晶質酸化物半導体」です。インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、それに酸素(O)という四つの元素からなる物質で、炭素(C)元素を含みません。こうした炭素元素が含まれていない物質は、無機物といい、熱に対しても安定的です。

これまで使われていた非晶質シリコンなどのかわりに、この非晶質酸化物半導体を使えば、20度や30度といった室温でも、「基板の上に薄膜トランジスタが乗っかっている」という状態をつくることができます。

プラスチックは20度や30度では溶けませんので、プラスチック基板の上に非晶質酸化物半導体を乗っければ、ぺらぺら曲がる基板に乗った薄膜トランジスタをつくることができるわけです。

しかも、このInGaZnO系の非晶質酸化物半導体は、これまでの非晶質シリコンでつくった薄膜トランジスタより10倍ほどの電子移動度があります。電子移動度とは、物質の中でプラスを帯びた電子と、マイナスを帯びた正孔という二つの種類のものがどれだけ移動しやすいかを示した度合。かんたんにいえば、電子移動度が高いほど、トランジスタの性能はよいわけです。

このInGaZnO系の非晶質酸化物は、東京工業大学の細野秀雄教授らが2004年に開発した、日本発の材料です。「曲がるディスプレイ」を実現させるものであり、今後は、電子ペーパーや、着られるコンピュータなどに広く使われることが期待されています。

参考ホームページ
科学技術振興機構「透明で曲げられる高性能トランジスタを実現 フレキシブルなディスプレイへのブレークスルー」
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