科学技術のアネクドート

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「科学書籍研究の視座」で語られた研究者と編集者の出会い


科学技術社会論学会の年次研究会が東京・早稲田の早稲田大学で開かれています。15日(日)まで。この学会は2001年に発足したもので、科学・技術と社会の界面に発生している諸問題をできる限り多様な視点から検討することを目指すもの。今回の年次研究会は8年目となります。

きょう14日(土)午前の部では、東京大学科学技術インタープリター養成プログラム住田朋久さんの主催で「科学書籍研究の視座」というワークショップが行われました。11月2日(月)東京・青海の日本科学未来館で開かれたサイエンスアゴラでの催しものの延長線にあるものです。

関連調査では、講談社科学出版賞受賞作品を題材として、各受賞作ができあがるまでの過程を検証。著者である研究者側と編集者である企業社員側それぞれに質問文を送ったり、聞き取り調査をしたりして、出版に至るまでの個別の過程を調べています。

ワークショップではゲストとして、中央公論新社で編集を行う佐々木久夫さんと、東京大学先端科学技術研究センター教授の西成活裕さんが登壇。佐々木さんは、第12回で受賞した田口善弘さん著『砂時計の七不思議』の編集を手がけました。また、西成さんは第23回で受賞した『渋滞学』を著しました。

40年間、本の編集に関わってきた佐々木さんは、本のつくりかたの実際を経験などを踏まえて紹介。本が生まれる8割型が編集側からの執筆依頼によるといった話や、書籍の返本率は39%といった話がでました。

また、質疑応答ではかつてといまの編集者のあり方の違いをこう話します。「かつては採算をど返ししても本をつくりたいという編集者が本をつくっていた。いまはコスト内で済ませることが優先になり、自分に掛かる仕事も増えた。それにより著者と会う時間も減っている」。

西成さんも、『渋滞学』ができるまでのいきさつを披露。「一般書を書いたのは『渋滞学』が初めてだったが、とちゅう二度『書くのを辞めます』と編集者に言ったことがある」と話しました。西成さんによると、厳密性とわかりやすさのバランスを考えると書けないと思ったそう。

こうした困難を乗り切るため、50歳のインテリ層に読者対象を絞ることを編集者と話し合って決めたり、説明するための比喩を考えたりしたといいます。

会場からは「研究者にとっての一般書執筆は教育としての意義がある。研究者が教育者であることの同定がどれだけあるだろうか」(早稲田大学科学技術ジャーナリスト養成プログラム教授の西村吉雄さん)や、「東大出版会による出版事業が大学収入のかなりの収入源になると聞く」(新潟県立大学の本間善夫さん)など多くの意見や情報が寄せられました。

科学技術社会論学会は15日(日)まで。学会のホームページはこちらです。
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