2020.09.01 Tuesday
「冷房なしで死ぬ」という異常が通常に
写真作者:spinster cardigan
2020年の8月は、全国的に暑い日が多くなりました。例年になく「熱中症にならぬよう気をつけて」というよびかけが聞こえてきます。
環境省は、「暑い日は夜でも冷房は積極的につけてほしい」といったように、冷房を使うことを人びとに強くすすめています。
実際、冷房を使わずに寝室にいた人たちが、熱中症の疑いで死亡するといったできごとが、いくつも報じられています。「エアコンを使わないのはどうして」といった見だしのニュース報道もあります。
「冷房を使わないと熱中症で死んでしまうおそれがある」ということが、人びとのなかでの既成事実となっているわけです。
これは、「人間は、もはや生きものとして自然のままの生きかたをしていると命を落としうる」ということをさしているのでしょう。冷房をつけないと死んでしまうかもしれないというのは、あきらかに生きものとしての自然な状態からはかけ離れています。
文明の利器に頼らないと人が命を落とすという事例は、もちろんほかにもありまるでしょう。たとえば、「生命維持装置をつけないと、患者がからだの機能不全で死んでしまう」といったものです。
しかし、冷房を使って命をまもることと、生命維持装置を使って命をまもることにはちがいもあります。生命維持装置を使わないと命を救えないという状況は、よほど特殊な事情がなければ生じないことです。
しかるに、冷房を使わないと命を奪われるかもしれないという状況は、高齢者をはじめとする大多数の人びとに生じることです。もはや一般的なことです。
冷房のような利器を使うことをよびかけるのは、人びとが命を落とさぬようにするという点では、とてもまっとうなことです。しかし、人びとが命を落とさぬようにするには、冷房のような利器を使わなければならないというのは、とてもとてもまっとうなこととはいえません。
参考資料
産経新聞 2020年8月18日付「熱中症搬送『住居』からが約半数 続く猛暑『冷房つけて』」
https://www.sankei.com/affairs/news/200818/afr2008180024-n1.html
NHK NEWS WEB 2020年8月21日付「エアコン使わないのはどうして?」
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200821/k10012575931000.html
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